時事評論(外交知識普及会 発行)
2005/1月号掲載
もうハトはでない      佐賀県知事 古川 康

この八月一日にオープンした佐賀城本丸歴史館がちょっとしたブームだ。この歴史館は、歴史的にもっとも輝いていた幕末・維新期の佐賀藩に焦点をあてた博物館なのだが、建物そのものも佐賀城本丸を復元したもので日本最大。とくに展示物のある三百二十畳敷分のスペースは圧巻だ。

オープン前に一般県民の方に見学してもらったところ、多くの方から「この広さを実感したいから展示物を置かないでほしい」という声が寄せられた。もともとは展示が目的なので、何も置かないわけにはいかない。そこで施設を可動式にして、年に一度は大広間として復活することにした。

この歴史館は元日からオープンしている。休みは年末の三日間だけと年中無休に近い。多くの文化施設が休む月曜日にも休まない。開館時間も午後八時までだ。この稼働時間はこの手の施設としては日本最長だろう。

正月は帰省してくる人が多い。そのときに新しくできた佐賀城本丸歴史館に行ってみたら休みだったというのではもったいない。また夕方五時に閉まったのでは、仕事で佐賀に来た方が楽しみにくい。開館時間の長さや休みの少なさはそんな発想から生まれた。

いま、この歴史館の入場料が佐賀県内で議論になっている。「無料」なのだが「入場料をとるべきだ」という意見がずいぶん出てきているのだ。
「無料」ということが住民から喜ばれてきた時代が長く続いた。しかし、今や「維持管理費がすべて税金によってまかなわれるよりは入場者からいくらかとるべきだ」という意見が堂々と出てきている。そこに「自治の成熟」があると言ってもいいのではないか。

魔法のように帽子の中からハトや花を取り出してくれる手品師はどこにもいないことを有権者は見抜いている。

佐賀城本丸歴史館の寄付箱にはこう書かれている。
「佐賀城本丸歴史館では、決まった入館料をいただくのではなく、御覧いただいた皆様の満足度やお気持ちに応じた寄付をお願いしています。いただいた寄付金は、畳や障子の補修など、本丸御殿を復元した当館を、快適に見学いただくための経費の一部として活用させていただきます。御協力をお願いいたします」