月刊公営企業 2006.11
 発行:(財)地方財務協会
 発行日:平成18年11月20日
巻頭言「佐賀県から全国へ 広がりを見せるちょっとした二つの政策」   
                                     佐賀県知事 古川 康

3年前、私が知事に就任してすぐに手がけたものに「トライアル発注」があります。
 これは、県内の中小企業が開発した優れた新製品や新技術を、県が試しに使ってみて、販売実績をつくってもらうとともに評価をする制度で、佐賀県が全国で初めてスタートさせました。
 それまで、県の中小企業支援というのは、新製品や新技術を開発するまでは、補助金を交付するなど積極的に支援しますが、販売という段階になると、企業努力と市場原理にゆだねることになっていました。
 そして、なかなか販売実績が上がらない企業から、県で使ってもらえないかと相談があっても、県は競争入札が原則で、しかも実績を重視するために、いわば門前払いの状況でした。
 ところがこの制度を始めると、予想を大きく上回る応募があり、佐賀県が使ったという実績が評価され、売上高が前年度の約8倍に急増したベンチャー企業や、専門誌で紹介されて関東圏からの受注が増えた建設業者など、すぐに成果が出ました。
 今年はさらに、「トライアル発注全国ネットワーク会議(仮称)」の設立を全国の都道府県に呼びかけており、佐賀県発の「トライアル発注」をさらに進化させたいと考えています。

 また、もうひとつ事例を紹介させてください。
 いま佐賀県で、ショッピングセンターやホテルなどの公共的な施設の身障者用駐車場を利用している車を見ると、ルームミラーに「身障者用駐車場利用証」というプレートがかかっています。
 これは県が、今年7月にスタートさせた「パーキング・パーミット」という制度で、利用証は、身体に障害のある方だけでなく、高齢者や妊産婦の方など、歩行が困難な方に広く交付しています。
 これまで、障害のない方が身障者用駐車場に車をとめるのでとても困っている、警備員の方も、本当にそこにとめる必要がある方かどうか見分けがつかず、何しろお客様なので、という声が多く寄せられていました。
 しかし、県がこの制度を始めたことで、本当に必要としている人のための駐車スペースが確保できるようになりました。

 かつて官は競争がないと言われた時代がありました。でもそんなことはないと思います。
自治体には、たとえば県の場合、46の同業他社があります。お客さまである住民自体は多くの場合競合していませんが、それぞれが切磋琢磨しているのは事実です。
そういう緊張感が自治体における新しい政策展開に結びついているのだと思います。