2003年9月23日(火)読売新聞掲載
福祉セミナー in 雲仙

介護保険 障害者も対象に首長7人 共同アピール


2005年の介護保険制度見直しに向けて、障害者福祉との統合論議が盛んになっている。
先月末、長崎県島原市で開かれた「福祉のトップセミナーin雲仙」(南高愛隣会主催、読売新聞社共催)でも、7人の首長が「障害者福祉サービスを介護保険制度の対象にすべきだ」とする共同アピールをまとめた。セミナーでの議論を振り返りながら、今後の課題を探った。(安田 武晴)

首長討論出席者

浅野 史郎(宮城県知事)コーディネーター
国松 善次(滋賀県知事)
古川 康(佐賀県知事)
釘宮 磐(大分市長)
森 貞述(愛知県高浜市長)
光武 顕(長崎県佐世保市長)
逢坂 誠二(北海道ニセコ町長)

◆厳しい財政◆
障害者福祉を介護保険に取り組む理由として、ほとんどの首長が挙げたのが、財政面でのメリットだ。
浅野史郎・宮城県知事は「介護保険を、重要な財源調達の手段として活用すべきだ」と主張。
逢坂誠二・北海道ニセコ町長も「障害者福祉の財源確保をシステム化できる」と強調した。
障害者福祉の予算は、国や都道府県、市町村の一般会計から出ているが、国も地方自治体も財政状況は極めて厳しい。
逢坂町長は「今のまま、道路整備や農業基盤整備などと同じように一般会計にいれておくと、財源のぶんどり合戦になり、サービスの質が維持できるか、極めて心もとない」と話した。
国松善次・滋賀県知事は「行政が借金だらけの中、障害者福祉をさらに進めたいと思うなら、介護保険をフルに活用し、地域主体のサービスを組み立てていくべきだ」と力を込めた。
光武顕・長崎県佐世保市長も、「障害者福祉に使われている公費(税金)を継承、拡大して介護保険に上乗せし、障害者への安定した給付を考えていくべきだ」と述べた。
一方、慎重な意見もあった。
釘宮磐・大分市長は、介護保険の給付が急速に増え続けている現状を指摘。
「先行き不透明な介護保険に、障害者福祉を合流させて大丈夫か」と懸念を示し、「障害者福祉の費用は本来、税金でまかなうのが望ましい。三位一体の改革の中で、国が地方に財源を十分に下ろすことが必要」と話した。

◆現状打破◆
今年四月から始まった障害者の支援費制度は、サービスを自由に選べることがうたわれている。
だが現実には、十分なサービス供給体制が整っていないため、選ぶことができない地域が多い。
「ほしいものを買うため店に行ったが、棚に商品が並んでいない状態」(浅野知事)だ。
この状態を打破するために、介護保険を活用すべきだとの声も多かった。
光武市長は「介護保険で、高齢者のサービス基盤は全国的にかなり充実してきた。同じように、障害者のサービス基盤も、介護保険の中で整備できる」と見通しを語った。
国松知事も「地域のきめ細かいサービスネットワークに障害者も含めれば、無駄の多い"縦割り"も解消できる。介護保険の『いいとこ取り』をすべきだ」と強調した。
また、森貞術・愛知県高浜市長は、高浜市で構造改革特区が認められ、高齢者の通所介護(デイサービス)施設を、知的障害を持つ人も使えるようになったことを紹介。
「高齢者へのサービス資源を最大限に活用すれば、障害者も地域で安全、安心、快適に住むことができる」と話した。
古川康・佐賀県知事は、「介護保険は、アルツハイマー病の人には適用されるのに、事故などで介護が必要になった場合は適用されない。原因は問わず、どんな介護が必要かという利用者のニーズに合わせてサービスを提供する仕組みにするべきだ」とした。

◆課題多く◆
障害者福祉を介護保険に移した場合、どのような制度になるのか、青写真を描く首長もいた。
浅野知事は、「障害者福祉の全部を介護保険に取り込まなくてもよい」と主張。
今回の見直しでは、
@精神障害者を含め、施設入所は別にして、身体介護など地域で暮らすためのサービスだけを介護保険に移行させる。
A買い物にガイドヘルパーを付けるような社会参加支援は、今まで通り税財源で対応する−などを提案した。
古川知事は、「被保険者の年齢は二十歳からとし、要介護認定の基準は、高齢者と別の仕組みが必要」と話した。
一方、今後議論すべき点も多い。
釘宮市長は「介護保険は原則六十五歳以上、支援費は0歳から対象となる。ど整合性をとるのか」と指摘。利用者負担の仕組みの違いも強調した。
このほか、支援費制度では、必須とされていない*ケアマネジメント制度の確立、低所得者対策など、様々な課題が指摘された。
移行の時期については、森市長が「今回の制度見直しを逃すと、おそらく十年間は、このままになってしまう」と述べたのに対し、光武市長は「解決すべき問題が多く、かなりの準備期間が必要」との見方を示した。

*ケアマネジメント
利用者に必要なサービスを見きわめ、効果的に提供できるように調整すること。
介護保険では法律に定められ、制度として確立しているが、障害者福祉の分野では、法による位置づけがない。






高齢者の介護サービスを提供する介護保険の財源は、税金と保険料が半分ずつになっている。
運営主体の市町村は三年ごとに、六十五歳以上の保険料を改定するが、保険料が上がれば公費負担も増えることが法律で決められているので、サービス需要がある程度増えても大丈夫だ。
一方、身体、知的障害者の支援費制度と、精神障害者の福祉サービスは、すべて税財源でまかなわれている。
市町村が、国や都道府県からの補助金を加えて一般会計で予算を組むが、財政難のため予算の増額は難しく、サービスの需要が増えても対応できないことが多い。
保険料徴収対象を二十歳以上に拡大するなどして介護保険と統合すれば、豊富な財源を使ってサービスを増やすことも可能になる。ただ、高齢者介護と障害者福祉ではサービス内容が違うため、統合にあたってはその調整が必要だ。

*介護保険の財源*(数字は%)