| 発行所:財団法人都市計画協会 新都市 16/10 掲載 |
|
| 特集 第56回都市計画全国大会(佐賀県) 佐賀県特集号によせて 古川 康 佐賀県知事 |
|
第56回都市計画全国大会が佐賀県で開催されますことを心からお祝い申し上げます。 また、全国各地から佐賀県にお越しいただいた皆様方を心から歓迎申し上げます。 佐賀に赴任してきた方々から、「佐賀は空が広い」といった声をよく聞きます。 確かに、佐賀県は平野部が55%を占めており、最も高い脊振山でも1055mしかありません。また、いわゆる大都市はなく、7つの市が県内に分散してます。これらの市では高いビルも少ないことから、見渡す空には遮るものがなく、広く感じられるのでしょう。 郷土を代表する歌人中島哀浪は、佐賀平野の秋をこんなふうに歌っています。 かきもぐと 木にのぼりたる 日和なり はろばろとして せふりやまみゆ −こころに火を灯す− このようにのどかで空気も澄んでいることから、夜の星々も何となく近くに感じられたりもするのですが、やはり暗い夜道は心細く思われます。 今年の1月、生活者の視点に立った施策を進めるために、「県民満足度調査」を実施しました。「これから力を入れるべき社会資本整備」という質問では、「街路灯、防犯灯」の整備を望む声がトップにあがっています。 さっそく街路灯の担当課を探しましたが、県庁のどこにもありません。このことを、私のホームページに載せたところ、県民の方からこんな便りがありました。 「私の実家は相知町の田舎にあります。周りはすべて農業を営んでいる集落です。建設業を営んでいた父は、私が物心ついたときにはすでに家の入り口近くにある電柱に自費で街灯を取り付け、夜間はこれを点灯していました。電球が切れると私たちが電柱に登って玉を交換するのです。 今でいう「一戸一灯運動」を、すでに昭和20年代の終わりごろには実行していたということでしょうか。 このことが私の頭に鮮明に残っていましたので、独立して唐津に家を構えてからは我が家の門灯を毎日欠かさず点灯することは当然のことでした。」 この便りをみて思いました。 今、全国各地でコミュニティの崩壊からの回復をめざして、いろんな地域づくりが行われていますが、結局のところ、地域づくりは人づくりではないのだろうかと。 だれもが周りのことを考えて、自分でできることを積み重ねていく。「一戸一灯運動」とは、一人ひとりのこころにこうした思いやりの火を灯していくことのように思えます。 昔の人の心がそうであったのなら、それはきっと今の人の心にも再点灯できるはずです。 地域づくりの原点はここにあるのではないのでしょうか。 −昔の人のこころね− 今から400年の昔、佐賀藩では「治水の神様」と呼ばれる成富兵庫茂安が活躍しました。 「工事をする人といっしょに現場の小屋に寝泊まりし、冗談話をしたり、みんなの声をよく聞いたりしました。またお茶の用意をしてやったりよく働いた人に菓子のほうびをやったりしたのでだれもが喜んで働きました。 藩のえらい方なのに気さくな人だとみんなからしたわれました。」 これは、成富兵庫茂安を地元の佐賀市がこどもたちに紹介した文章です。 「いばらず皆にしたわれた人」というタイトルが付いています。 筑後川の洪水から佐賀平野を守るために築いた約12qにも及ぶ「千栗土居」、佐賀城下の飲料水や佐賀平野の農業用水を確保するために築いた「石井樋」など、100箇所以上で治水事業を行ったといわれています。 こうした治水事業では、その技術の高さはもちろんのこと、その地域に住む人たちの心を一つにすことがなによりも重要ではなかったのでしょうか。 地域づくりの成否は、そこに住む人が幸せを感じることができるかにあると思います。 そういう意味で、彼は人のこころを治めることに意を尽くした人でもあったのでは、と想像しています。 −佐賀県のこころみ− 地域には、そこに住む人たちのこころのよりどころ、あるいは誇りとなっているようなものがあります。例えば、地域のシンボルとなっているような古い民家などです。 こうした建築物を佐賀県遺産として登録し、その保存・活用を図るために「22世紀に残す佐賀県遺産」制度を立ち上げました。 経済的価値がないとか、文化財には該当しないというだけで壊されていくようなものを 住民の手で守りながら活用していくというものです。 また、たとえ既に失われたものであっても、それを復元し、みんなの誇りとすることができます。去る8月1日に、天保期の佐賀城本丸御殿の一部を忠実に再現した佐賀城本丸歴史館を開館しました。 その時、日本は佐賀を見ていた。 佐賀は、世界を見ていた。 日本の近代化をリードした幕末期の佐賀藩がそこにはあります。 どうぞ、佐賀県のこころみ(心意気)にふれてみてください。 これから晩秋に向かいますが、佐賀県では、伊万里トンテントンや唐津くんちなどの秋祭りやバルーンフェスタなど、たくさんのイベントが催されます。ぜひとも、晩秋の肥前路へもお越しください。 本大会の開催にご尽力いただきました国土交通省、財団法人都市計画協会をはじめ、関係の皆様に深く感謝と敬意を表しますとともに、本大会の成功と全国の都市計画関係者の皆様方のご健勝とご活躍を心からお祈り申し上げます。 |