都道府県展望平成18年6月号掲載
 発行所:全国知事会
「限られた財源とみんなの知恵を活かした年に」   佐賀県知事 古川 康

@七歩の詩

三国志の時代につくられた「七歩の詩」という詩がある。作者は曹植(そうち)。曹操の三男であり、兄の曹丕と跡継ぎ争いをした。結果は、曹丕が皇帝になったが、曹丕は曹植を処分しようと考え、曹植に難題をつきつけた。「七歩歩く間に『兄弟』というテーマで詩をつくれ。しかも、詩の中に『兄弟』という文字を使ってはならない」、それに対して曹植がつくったのが「七歩の詩」だ。日本語訳だと次のようになる。


豆を煮るのに豆がらを燃やす 豆は釜の中で泣いていた
もとは同じ根から生まれた同士 どうしてこんなにまで煮てひどく苦しめるのですか


曹植は、曹丕と兄弟であることを、「豆」と「豆がら」にたとえて表したが、今の「国と地方」と同じだ。本来、国民に対してサービスを供給する同じ立場であるにもかかわらず、ある意味無関係な対立をしている。もちろん、地方は自らの主張を続けることも大事であるが、国民が地方の主張に共感をもっていただけるよう、まずは、限られた財源を活かして、しっかりしたサービスを提供していく必要がある。

A三位一体の改革の成果

限られた財源を活かすためには、地方分権が効果的である。昨年一応の決着をみた三位一体改革の結果は、地方の自由度にはあまり結びつかなかったが、わずかでも、地方の自由度に結びついたものについては、その成果を示していく必要がある。
 例えば、看護師をめざす学生への修学資金の国庫補助制度があった。佐賀県では、これが一般財源化されたことで、制度の見直しを行い、看護師をめざす学生への貸し付けは、県の育英資金など、ほかの制度で対応することにした。
そして、本当に佐賀県で必要としていた小児科医や産科医をめざす学生への貸し付けに制度を変更した。
全国の自治体が、こうした独自の「改善」を競い、分権型社会は、くらしを豊かにすることを実証していく必要があると感じている。

B知恵の「わ」プロジェクト

厳しい財政状況のなかでは、予算は重点化せざるを得ない。しかし、やらなければならないことはある。そこで、予算がゼロでも事業を行う「佐賀県職員知恵の「わ」プロジェクト」に取り組むことにした。「わ」という言葉には、「話」「和」「0(ゼロ)」「∞(輪)」、そういった意味がある。予算がないからできないではなくて、汗をかいてみようということだ。

そのひとつとして、「ノーブレス・オブリージュ(高貴な社会的責任)支援」を考えている。例えば、障害者の雇用、環境配慮といった社会的な責任を果たしている企業の入札参加資格評点をプラスすることで、公共事業を受注しやすくしたり、広報誌でPRする。そういう形で企業の評価を高めることによって、県がめざす障害者の雇用や、環境配慮を進めたい。こうしたことをつうじて、地域住民や企業、団体を巻き込んだ新たな「公」を作っていきたい。

C今後の見通し

平成18年度予算は何とかやりくりしながら編成した。とくに、景気が全体的に回復基調であるなかで、地方の場合は、それが税収になかなか跳ね返りにくく、歳入面で苦労した。
地方分権を進める中で、「自立」した「佐賀県政府」となるためには、歳入をどのように見積り、確保するのかという点が、これまで以上に重要になる。
このため、税源を育てる一方で、今、進められている地方税財政の改革が本当に地方にとっていいものとなるように、積極的に発言・行動していく必要があると感じている。