| 2004年10月発行:地方財務協会 地方税 10 |
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| 国税/地方税交換論への試み 佐賀県知事 古川 康 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1 「移譲」か「委譲」か 税源移譲の議論がようやく活況を呈してきた。地方自治関係者としてはまことによろこばしく思うところである。 ところで「税源の移譲」という言葉と「事務の委譲」という言葉があり、ともに「譲り渡す」という意味で「いじょう」と発音されている。 「移譲」と「委譲」とはどう違うか。かつて地方税当局に勤務していたことのある私の記憶では、意味は同じとしながらも使い分けをすることにしたように思う。税源は移譲、事務は委譲と。事務は国から「委ねられて」つまりは「頼まれて」地方が行うということはあるかもしれないが、税源は国から「委ねられる」ことはないだろうから、という議論をしたような気がする。深い意味があったというわけではなかったが、それまでけっこうごちゃごちゃに使われていたのをその時期に整理をしたように思う。だだ、ネット検索をしてみると、現時点では「委譲」か「移譲」かということについては自治体によってまちまちのようだ。ちなみに佐賀県では、事務であれ、税源であれ、地方の責任と判断で行政を遂行するという思いから、権限移譲も税源移譲も「移譲」としている。 それはともかく、以前担当していた者の感覚からすれば、この税源移譲の議論が具体性をもって議論できるような時代が思ったよりも早く到来したと思う。関係者の努力に敬意を表したいし、このチャンスをぜひ生かしたい。 さて、本稿では麻生プランで示されている住民税10%フラット化が実現するものとした上で、その先に何が必要かを議論してみたい。つまり、現実問題として課税客体の地域間格差の解消が不可能である以上、国庫補助負担金を廃止して地方税へ税源移譲すればするほど、地方税制が本来的に抱えている地域間格差の問題が顕在化するという新たな問題に悩まされることになるが、それを地方税と国税の交換という手法によって解決できないかというものである。 より具体的には、法人住民税を国税化することで国税である法人税収入を増やし、その分減った地方税収については消費税の一部の地方消費税化によってカバーするというものである。 これにより地方税全体としては総額を確保しながら地域間格差を縮小させることができると考える。 2 住民税率10%化によって起こるであろう地域間格差の見通し 麻生プラン(16年4月26日公表)によれば、3兆円の税源移譲を個人住民税所得割の税率の10%へのフラット化によって行うこととされている。ではそのプランに基づいて税源移譲がなされた場合、各都道府県ごとに住民税所得割の偏在性はどういうふうになっていくのかみてみよう。(表1) なお、データは平成14年度の決算額を基に本県が作成したものである。 表1 フラット化に伴う人口一人当たり住民税の増加率と偏在度の変化 (住民税所得割のみ) (単位:円、%)
これによると、人口1人当たりの住民税所得割額自体は、現在もフラット化後も東京都など都市部が高いが、伸び率という点では、いわゆる「地方」の伸び率が高いことがわかる。つまり、住民税所得割だけを見ると、現在とフラット化後の偏在性(=最大の東京都と最小の沖縄県の格差)は縮小(3.1倍→2.7倍)することとなる。 しかし、都道府県税全体の人口一人あたりの税収格差(地方消費税については市町村交付金分を除く)をみる(表2)と、最大の東京都と最小の沖縄県の格差は、このフラット化の実施によっても2.7:1が2.67:1にしか縮小しない。 表2 都道府県税全体の人口一人当たり税収の推移 *地方消費税は市町村交付後 (単位:万円)
地方税制の充実は大切なことであるが、今回の三位一体改革で目指しているやり方では、地方税全体として充実したとしても地域間格差の解消にはそれ程つながらない。そこで、格差の原因がどこにあるのか、そしてその解決方策がないのか、次にみてみよう。 3 法人関係税にみる税収格差ほど経済活動には大きな差がない 法人関係税(法人事業税と法人住民税のいわゆる法人二税)をみてみる(表3)。 これによれば県民一人あたりの法人二税の税収格差は約7.1:1である。 一方、経済活動を示す指標をいくつか見てみると、県民一人あたりの県内総生産は最高の東京都が約703万円、最低の奈良県が約264万円とだいたい2.7:1の差である(表3)。 また、経済活動の結果である一人あたりの県民所得をみても、トップの東京都と奈良県との差はだいたい2.1:1の差である。(表3) 表3 税収格差と経済格差 1人当たり法人二税(平成14年度) (単位:万円)
1人当たり県内総生産(平成13年度) (単位:万円)
1人当たり県民所得(平成13年度) (単位:万円)
むろん、法人関係税においては地域的な事業活動の実態を適切に税収に反映させるべく、さまざまな工夫がなされてきているところであるが、法人関係税が地方税に馴染むこと自体は十分前提としながらも、偏在性の少ない地方税制の充実のためにはむしろその規模を縮小させることもありうるのではないかと考える。 4 法人住民税と消費税との交換 そこで、この際、法人関係税のうち法人住民税(法人税割)を国税である法人税に吸収し、その同額を消費税から地方消費税にする、という税収交換について考えてみたい。 法人関係税のうち、法人住民税(法人税割)と法人事業税では偏在性に大きな違いはない(表4)。今回の議論は偏在性の高い税目を国税とすることにあるのであり、交換対象としてはどちらでもいいことになるが、法人関係税すべてを国税としてしまうと、産業振興や企業誘致へのインセンティブが働かなくなることになるばかりか、法人も社会的存在として、地方公共団体が提供するインフラ整備等の受益を受けている以上、受益と負担の関係からも問題が生じる。そこで、法人事業税については昨今一部外形標準課税が導入され、受益と負担の関係という面からの制度改正がなされていることを考え、今回は、この税については地方税として位置づけ、法人住民税のうち法人税割について交換対象として考察することとした。 まず、法人関係税や消費税をはじめとする主な税目についての税収額と偏在度をみてみる。(表4) 表4 都道府県税目毎の偏在性(平成14年度)
これでわかるように法人関係税は偏在性が高く、逆に消費税は偏在性が低い。たばこ消費税では絶対額が小さすぎることを考え、ここでは法人住民税(法人税割)の交換対象として消費税を考える。 また、交換対象となる法人住民税(法人税割)の額については、消費税が市町村にも配分されることを考え、都道府県税のみならず、市町村税も併せたものによるものとする。 5 実際の交換結果 平成14年度における法人住民税法人税割(超過課税分含む)の決算額は2.1兆円である。現在、都道府県の法人税割については、46都道府県で超過税率が設定されている。実際に超過分まで交換の対象にするかはさておき、ここでは現行の税制下における収入実績を確保するという考えから、一つの試みということで、超過税率分を含めて試算するのでご容赦願いたい。これを国税化し、ごく単純に法人税割2.1兆円を法人税9.5兆円に上乗せし、逆算すると、国税の法人税率はいまの30%から36%へとポイントアップする。(厳密には所得段階別税率、軽減税率や租税特別措置法等による軽減措置の法人住民税への影響遮断、また法人住民税の超過税率文を排除することになれば、ポイントは36%よりも低くなる。)。 一方、消費税においては、これまで国税分が4%相当、地方税分が1%相当であったのに対して、それが国税分が3.2%相当、地方税分が1.8%相当(県分0.7、市町村分1.1)となる。 こうした2.1兆円の法人住民税(法人税割)と消費税の交換により、県民一人当たりの税収格差は、現在の2.7:1から2.55:1に縮小する。ちなみに、法人住民税(法人税割)に加えて、法人事業税の半額を同じように、国税の法人税に吸収し、その同額を消費税から地方消費税に移した場合は、税収格差は、2.18倍にまで縮小する。 6 予想される反論 と おわりに こうした交換により法人関係税収の減る自治体においては当然のことながら反発が予想されるが、もともとこうした自治体においてはすでに3兆円の税源移譲によって本来的に必要とする以上に税収増が見込まれるところであり、この交換のみで損得を判断すべきでないと考える。 また、地方消費税はその徴収を法律により国に委託している。そしてその委託コストは約94億円であり、各都道府県が負担をしているものであるが、地方消費税の配分割合を高めてほしいという議論をすると、「国が委託を受け、消費税とあわせて徴収を行っており、地方が直接に税を徴収する仕組みとなっていない」と、地方への移譲を税の徴収面から牽制する意見(平成15年12月政府税調答申)が出てくる。 しかしながら、消費税の徴収を実態的に誰が行っているかということとその税収の割合がどうあるべきかということが、同一のロジックで整理されるべき事項であるわけではないことはもちろんである。それを言うならば、住民税のもっとも基本的な税であるところの個人住民税については、県税分も含めて市町村が徴収しているが、だからといって、個人県民税の税率が変えられないものではないし、事実国税当局はかつてから「個人住民税が受益に応じて自ら負担水準を決定するという応益性、自主性の要請に最も合致する」「税源移譲の実施とともに、地方団体において積極的に課税自主権を発揮されることが望ましい」という見解を何度も示している(たとえば16年8月31日経済財政諮問会議谷垣議員提出資料)ことと明らかに矛盾するものである。 地方税制の充実と地域間格差の縮小は地方自治関係者だけでなく、そこに暮らす多くの住民の願いである。三位一体改革という国と地方の役割分担や税財源関係を見直す機会に、交付税財源の位置づけと併せて税体系の再整理をすべき時期に来ていると考える。 本稿が税源充実と偏在性の解消に向けた議論の参考となれば幸いである。 |
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