都道府県展望平成16年10月号(全国知事会発行)
「ある日の知事」

■カンボジアで「対外協力は三位一体と同じ」と気づいた日

八月二十七日(金)

八月二十三日から八月二十七日まで十二年ぶりにカンボジアを訪問した。佐賀県のNPO「カンボジア教育支援フロム佐賀」が支援している学校を訪問して学生や先生達と交流を行うことや、JICA派遣の専門家やシニア海外ボランティア、青年海外協力隊員などの活動現場で意見交換を行うのだ。
この日は、プノンペンで、身体障害者の義肢・装具を作る資格をとらせるための専門学校とその資格を生かした実際のリハビリテーションをやっているカンボジアトラストというところに行った。
お昼をはさんで日本大使館を表敬訪問し、大使からカンボジア情勢その他のお話をいただいた。ODAの必要性というものを日本のメディアにご理解いただくにはどうしたらいいのだろうか、というような話をされておられた。
ODAも、また今回の活動のような草の根のNGO活動も、カンボジアにとっては両方必要なのだと僕は思うので、その点を申し上げた。どちらかが必要ということではない。政府でなければ道路整備はできないし、逆にきめこまやかな地域的な支援活動はむしろ政府とは関係なくNGOが行ったほうがいいこともある。
なんのことはない。三位一体の改革と同じことなのだ。プノンペンの地で三位一体のことを考えるとは思わなかった。

僕が属している「地球市民の会」での話だ。この「地球市民の会」はタイの子どもたちに奨学金を出したりしている、佐賀県に本部を持つ団体だ。
ある会員が以前奨学金を出していた少年、というか元・少年から手紙が来た。彼はその奨学金のおかげで学校に行き、その後、IT関係の企業に就職して、今度台湾の工場に勤めることになったという。その会員は彼に会いに台湾に行った。昔を懐かしみ、またこれからの夢を語りながら、食事をした。その中で家族の話が出た。 彼には弟がいる。その弟が今度高校に入学することになった。その会員は「じゃあ、また奨学金出させてよ」と軽い気持ちで言った。ところが、彼から帰ってきた答えはこうだった。「あなたのおかげで私はこうやって、学校を出て、台湾に来ました。おかげでタイにいるのと比べてたくさんの収入を得られるようになりました。今度は私が弟の面倒を見ます。そして弟も学校を出たら、また自分で仕事を見つけてゆけるようになると思います。あなたの蒔いてくれた種がこうして育っているということなんです。」
支援をする、というのはこういうことなのだと思う。自立していくことができるようにするために、そっと何か後から背中を支えるような、そしていつのまにか背中を押す手が離れていても、気づかずに一人で歩けるようになっているような、そういう何かをぜひともやっていきたい。

■サガン鳥栖が勝ってバンザイをした日

九月四日(土)

鳥栖スタジアムにJ2のサガン鳥栖とアビスパ福岡の試合、通称「九州ダービー」を観に行った。
サガン鳥栖はいま経営再建中。佐賀県としては直接出資をするというかたちではなく、側面からの支援、具体的には集客の支援をやろうということで、この試合の二日前に「佐賀県プロサッカー振興協議会」を立ち上げ、この協議会としても集客に協力しようということになっていた。
サポーターも動いた。チケットをいろんな団体や学校の児童生徒に送り、ぜひ観戦に来てもらいたいとエールを送ったのだった。ここ数試合、鳥栖スタジアムの観衆は三千人前後だった。当日の動員目標を七千人、できれば八千人に置いた。
その日は霧雨になった。この雨じゃ集客は無理か。僕は県外に出ていて、試合開始前に鳥栖スタジアムに着くことはできなかった。試合が始まってしばらくしてから現地に連絡を入れてみた。
「お客さんは?」
「駐車場があふれています。入れない車がまだまだいます。」
「試合は?」
「勝ってます。一対〇です。」
「わかった、急いで行く。」
僕が現地に着いたのは試合終了二十分前だった。サガン鳥栖のサポーターに合流した。
掲示板は一対〇のままだった。
結局、そのまま勝った。観衆は九,五六五人。もう少しで一万人だったけど、急な取り組みだったし雨だったのだがそれでも目標をはるかに上回っていて成功だった。しかもアビスパに勝った。二年一ヵ月ぶりだった。
選挙以来久々にみんなでバンザイをした。

■古湯映画祭で陣内孝則とトークをした日

九月二十五日(土)

古湯映画祭に出かけた。温泉で映画を、と地域のメンバーが集まってスタートさせ、ござで寝ころびながら映画を楽しむ、というスタイルで二十一回を重ねている。
今年の特集は陣内孝則。彼は福岡県大川市の出身だが佐賀大学附属中学校に来ていて、そこで僕と同級だった。彼を迎えての映画祭の中、僕がパーソナリティを務める地元ラジオの公開生放送を入れ込んで久々にトークを交わした。
陣内は昔と変わらずサービス精神旺盛で会場のみんなを大いにわかせてくれた。
佐賀県ではいま「アジアのハリウッド構想」を進めている。これは佐賀県を映画・アニメ・ゲームなどのデジタルコンテンツの集積地にしていこうというもので、それによってブランド力の強化、新しい産業立地、そしてチャレンジドの就業機会の拡大などを狙っている。
来週は伊万里市で伊万里・黒澤映画祭。来年スタートする黒澤明文化振興財団主催のショートフィルムコンペティションでは佐賀県知事賞を出す予定でこうした取組みによってこの分野における佐賀県の存在感を高めていきたいと思っているところだ。
カミングスーン、乞うご期待。