機関誌「自由民主」2354号掲載
発行:自由民主党
「定額給付金は必要だ」                     佐賀県知事 古川 康



「ここ数年給料は増えましたか」
「いや、むしろ減ったね」
「家計はどうですか?」
「それはきついよ。給料は減るし、ガソリンはなんとか落ち着いたけど、パンもラーメンも値上がりしたまま下がらないし。実際に使えるお金が減った感じだね」
「どうしたらいいですかねえ」
「税金安くならないの?」
「たしかにひとつの方法ですよね。ただ、減税というからには税金(所得税)を納めていただいていないといけないわけですが、一定の所得以下の世帯は所得税の納税の対象になっていないんですよ。その世帯が全世帯のうちどれくらいあると思いますか」
「生活保護世帯が約1%というから、それより多くて5%くらい?」
「約27%です」
「えっ?全世帯の約27%が所得税を納めてないの?」
「そうなんです。生活保護を受けておられなくても課税最低限以下の世帯が多いんです」
「思ってたより多いなあ」
「こういう世帯に対しては所得税を減税しても意味ないですよね。どうしたらいいと思いますか?」
「何もしないというわけにはいかないんじゃないか。暮らしが厳しくなっていっているのはそういう世帯なんだろうから。だったら減税の代わりに減税相当額のお金を渡したらいいんじゃないの?」
「だからそれが定額給付金なんですよ」

これは僕とある支持者との実際の会話だ。家計が厳しくなっている中、減税だけでは救いきれない世帯をカバーするためにはどうしても全世帯を対象にした政策が必要でそれが定額給付金なのだと思う。
ふるさと創生は全国で3000億円だったし、地域振興券は7000億円だった。それに対して定額給付金は2兆円。桁が違うのだ。これだけの資金を動かしていけば工夫次第でいい変化を生み出すことは可能だと思う。
市長さんたちに何が大変なのか聞いてみると「何人ぐらい市役所に人が来るかわからないから」「前回のときに対象にならない人からの苦情が大変だったから」という答えが返ってくることが多い。「振り込め詐欺が心配だから」という声もけっこうある。
もちろんこうしたことに対する備えをしておくことは必要だ。ただ、地域振興券のときに多かった2大苦情「子どもや本人の年齢によってもらえない人がいる」と「外国人は納税しているのになぜだめなのか」に対しては今回対応できている。あのときの経験を生かした仕組みになっている。そこはもう少し自治体に対してアピールしてもいいのではないかと思う。
また、地域振興券のときには各地の商店街でいかにして使ってもらうか、あちこちで工夫が凝らされた。今度はキャッシュだ。世界中で使える日本円を自分たちの地域で使ってもらうための取り組みが各地で競われることを期待したい。
当時、地域振興券を英語では「Local Economy Kick-start Voucher」(海外メディアからの取材も多かった)と呼んでいた。地域経済に再生のキックオフを、という願いは今回も共通だと思う。これから行われるであろう自治体現場のいろんな工夫はぜひとも大目に見てはいただけないか。