住友生命「地方自治の風」 2004年2月号掲載
県民協働で県づくりを推進し、「県民満足度日本一」を目指す

就任当時は現役最年少。古川知事はとにかくパワフルだ。
県民との対話を積極的に重ね、マニフェストの実現化に取り組む。


先鋭インタビュー 佐賀県知事 古川 康

昨春の知事選で、知事は県民との約束としてマニフェストを掲げられましたが、県政や県づくりにどのような思いを持っておられたのですか。
知事
昨年2月頃は、マニフェストという言葉もまだ一般的ではありませんでしたが、当時三重県知事をしておられた北川さんからのお誘いで、私も作ったわけです。
なぜかというと、従来の政治公約は、老後を安心して暮らせる社会をつくりますとか、うるおいのある街をつくりますといったように誰にも一面納得したように感じてもらえるが、何をやれば公約を果たしたことになるのか、評価基準がきわめて曖昧だと思っていたからです。
また、私の場合、大きな組織がバックにあるわけでもなく、それなら自分の考えを明確に示して、有権者の皆さんに理解していただくしかないのではないか。そこで常々思っていたことを項目にして、可能な限り数値目標も盛り込んで、4年後に通信簿をつけていただけるような形にしたいと思ったんです。
そうすることで行政に対する興味と信頼を取り戻したいという気持ちもありました。
ですから就任直後の6月議会に出したほとんどの提案は、マニフェストを実現していくための予算でした。

私は景気と雇用が重要で、かつ緊急な課題と考えており、たとえば企業誘致を促進するために工業団地のリース化をマニフェストにも挙げていました。
そこで条例を整備してリース制度を取り入れ、伊万里市にある七ツ島工業団地を年100円/平方メートルという価格でリースを始めました。ワンコイン・リースといっていますが、引き合いも結構来ています。
また、国や県は新技術の研究開発に補助金は出しますが、その製品の購入には、あまり積極的ではなく、実績がなければ買わないわけです。
そこで、県内で開発された技術や製品を県が試しに発注する「トライアル発注制度」も設けました。県内企業に募集したところ、105品目の応募があり、審査を経て27品目(26事業者)を今発注しています。
使用後はその有用性を評価・公表するという条件付きですが、企業からもこの制度の方を充実させてほしいという要望が強いんです。
このようにマニフェストに対して県民の皆さんの意見を聞きながら、小さな成功を積み重ねていきたい。佐賀県は人口87万人という小さな県ですが、その分、県政に県民の声が届くといったような、小さいなりの良さがあってもいいと思う。
ですから私は佐賀県を日本一、県民の声が届きやすい県にしたいし、生活面でも県民満足度が日本一になるような県をめざしたいと思っているのです。

そのために特に力を入れていらっしゃる政策は何ですか。
知事
経済基盤の強化です。
もう国のお金に頼る時代ではなくなり、県民にレベルの高い行政サービスを提供していくには、自前の税収を確保しなければなりません。とはいえ、容易に増税などできませんからできませんから、すべきことは増収策です。
税金を払っていただける人々や法人を増やし、その所得を上げる。また消費活動を活発にすれば、結果的に税収増につながります。また、これからは環境や福祉、教育などが重要な政策課題になりますが、その分野に力を入れていくには元手となる税収が必要です。そのためには産業振興を図り、そして定住・交流人口を増やす施策に取り組むことが先決です。
たとえば、わが国の福祉に対するお金の使い方を見ても、福祉全体を10として、年金に5、医療に3、障害者や児童、高齢者福祉には2しか使われていない。税金の使い道としては、本来必要としている人に必要な給付をする医療や福祉を充実させる方がいいと私は思っていますので、そのためにも自主財源をきちんと得ていきたいのです。

また、県内人口の社会減もかなり進んでいますが、県外に出ても、生活環境や働く環境さえ整っていれば戻りたいという人が大勢います。その環境が整っていないのは、半分は行政の責任だと思っていますので、佐賀県に住みたい、住んでみたいという人の思いがかなえられるような県政をしていきたいと考えています。

立地的には佐賀県は非常に恵まれた環境です。
福岡都市圏が近く、大都市の文化が享受できる一方で、田舎の良さも多分に享受できる。
私が住む知事公舎のそばの川にはホタルが出るんです。県庁所在地で、しかも街の真ん中で、そんなところ他にないでしょう。その意味では佐賀は先進地帯であり、この環境は壊さないようにしたい。そうした諸々のためにも、何より基盤となる経済を重視していきたいと思っています。

県民の声が届く県をめざして、県民の皆さんとの対話も積極的に行われています。「知事とかたろうかい」などでの手応えはいかがですか?
知事
「かたろうかい」は「知事と語ろう」という意味もありますが、「かたる」というのは佐賀の言葉で「参加する」ことなんです。
「あんたもかたらんね」、つまり「あなたも参加しませんか」ということで平仮名にしています。
これは1年間に49の全市町村で開く予定です。それとは別に「緊急対話集会」も8か所で行いました。
県民の方と直接お話をして一番感じるのは、とにかく話を聞いてほしい、そして少しづつでいい、ゆっくりでいいから何かやってほしいということです。要望や発言内容は違いますが、そのことを一番求められているように思います。
先日も佐賀市内での「かたろうかい」を県庁近くの互助会館3階で開こうとしましたが、古い建物でエレベータがない。車椅子の方から「それでは行けませんね」というメールが来た。職員が手伝うにしても、電動車椅子は簡単に持ち上げられるものではないということで悩んでいたら、ある職員が「県庁でやりませんか。県庁新行政棟ならバリアフリーです」と提案してきました。すぐに変更情報を出すと、「みんなで参加します」と喜んでもらえた。
県民全体ではなく佐賀市民が対象なので、最初から県庁を会場にすることには遠慮があったのですが、1通のメールで場所を変更することになった。このように自分たちの声で行政が動き、その成果が少しづつ積み重なっていけば、もっと行政に興味と関心を持って動いていただけるのではないかと期待しています。

それに長く佐賀を離れていた私よりも、県民の皆さんや現場の職員の方が県のことに詳しい。私が4人の知事さんの下で仕事をしてきた経験から思ったのは、知事は県庁のトップであると同時に県民の代弁者でもあるということです。
この2つの顔を絶対に忘れてはいけない。ですから、庁内から上がってきた情報や判断が県の考え方として妥当なのかどうか、私は県庁と県民、それぞれの立場からチェックしているつもりです。
職員や県庁そのものは大事にしながらも、県民から安心して任せていただけるような県政をこれからも進めていきたいと考えています。