2004年2月18日
「第十回よみうり・西部フォーラム佐賀会議」
(読売新聞西部本社主催)
「知ることからはじめよう」

◆歴史遺産の活用話し合う

「佐賀の歴史的文化遺産をどう生かすか」をテーマに十八日、佐賀市の市民会館で活発に議論が交わされた「第十回よみうり・西部フォーラム佐賀会議」(読売新聞西部本社主催)。「知ることからはじめよう」を演題に特別講演した古川康知事は、佐賀の歴史や文化を知ることが、ふるさとへの愛着につながると訴えた。続いて行われたパネルディスカッションでは、各委員がそれぞれの視点から、佐賀の歴史と文化を地域の活性化に生かす方策を提案するなど、熱心な議論が続いた。内容を紹介する。
             
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◆「佐賀と言えばこれ」作ろう 古川知事が特別講演

佐賀市で中学時代を過ごした。二十九年たち、昨年久々に佐賀市に来て感じたのは、町が壊れているということだった。歩きやバス、自転車で暮らすのに、これほど不便な町はない。昔ながらの町並みを再発見したいと思っている。

知事選の選挙運動で困ったのは、佐賀では商店街でも外に人がいないこと。
大型商業施設も便利だが、閉じられた空間で、町のにぎわいにつながらない。
にぎわいを取り戻すためには、自分の町を大事にする思いが出てこないといけない。

佐賀を知る人が増えることが、地域の強みになる。県内には、私たちが知らない意外なことがたくさんある。佐賀と言えばこれという「佐賀これ」をつくる運動をしたいと思っている。

分かりやすいのは焼き物ではないか。学校教育で、小中学生に焼き物を体系立てて教えるプログラムを作るようお願いしている。焼き物に詳しければ、将来、県外に出ても「やはり佐賀の人は違うね」という話になる。農業従事者が多い県として、子供に農業体験を教えるのも必要だ。

さらに、人事委員会に、県職員の採用試験で佐賀の地理と歴史の問題を出すよう要望している。試験に出ると分かっていれば、多くの人が勉強する。将来は「佐賀んもん検定」のようなものをやればいい。地域のことを知ることで愛着が生まれ、誇りにつながる。これから、もっと自分たちをアピールする文化を県内に広めたい。まずは「知ること」から始めましょう。
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【特別講演】
◇…講師…◇
知事 古川 康 45

【パネルディスカッション】
◇…コーディネーター…◇
村岡総本舗社長 村岡 安廣 55
◇…委員…◇
地域情報プロデューサー 川本 喜美子 57
郷土史家 福岡 博 72
佐賀広告センター 宮副 直記 43

(敬称略、委員は五十音順)


■誇れる文化遺産
村岡 佐賀が誇るべき文化遺産は何でしょう。
◆国指定文化財は豊富 福岡氏
福岡 県内には大変な数の国指定の文化遺産があるのに、県民は「何もなか」と言う。
とんでもない。佐賀鍋島藩は全国で八番目の大名だった。幕末には大砲や汽車模型を造る素晴らしい技術もあった。
川本 県内に点在している鍋島文化では。鍋島藩は鎖国時に長崎を警護し、蒸気機関車などいろんなものが入ってきた。焼き物や布文化もすごい。お菓子でも当時、国内の砂糖が70%も入っていたと言われる。
宮副 一般的には吉野ヶ里遺跡が思いつくが、ほかにも、観光の“原石”が眠っている。
例えば江戸時代の刀。勝海舟や坂本竜馬は、肥前刀を持っていた。インターネットで肥前刀の作者名を検索すると、海外のサイトも見つかる。十分誇れるものだ。
村岡 諫早藩の記録には、佐賀の人は鳥や豚など、長崎の出島のオランダ人と同じようなものを食べていたと載っている、という話を聞いた。食文化のパワーだ。佐賀のGDPで最も大きいのは加工食品。特に菓子。そこから幕末に生まれたのが、日本を代表する工業国の佐賀藩だ。知事は、これらを県が十分に活用できていると思いますか。できていないならば、課題は。
◆数絞って情報発信を 古川氏 
古川 生かし切れていない。佐賀には文化遺産が多すぎて、「これ」というものを絞り切れていないのが問題。
「これ」というものを絞って、分かりやすい形で情報発信する工夫が必要だ。

■佐賀城本丸歴史館の活用策
村岡 観光拠点としても期待されている佐賀城本丸歴史館をどのように活用すべきでしょうか。
福岡 完成すれば、佐賀のシンボルになる。最初は、訪れる人が多いだろうが、三年後、四年後にどう使うかが大切な問題だ。川副町に開館する佐野記念館と結べば、観光拠点にできる。
川本 情報誌の仕事をしていたが、県庁から回された問い合わせが多かった。情報発信が一つになりきらず、大きなパワーになっていない。歴史館は県民全体で活用する「佐賀県人大公民館」でいいのでは。
宮副 観光だけでなく、佐賀の人が幕末、明治の人物や技術を学べる啓もう施設になればいい。今は、郷土に自信をなくしている。「葉隠」など精神的なものを伝える拠点に高めていけると、ほかの文化遺産と勝負できる。
古川 年に一、二回展示物を撤去して、広さと当時の雰囲気を感じてもらえるようにする。年末年始も休まず、歴史館で新しい年を迎えるのはどうだろうか。佐賀の文化が感じられる茶や菓子を食べてもらう場所も確保したい。
村岡 県立博物館を情報発信センターに使い、歴史館で焼き物など生活文化を見せたい。佐賀のど真ん中なので、ネットワークの中心になる。精神的なものを次世代に伝える機能もお願いしたい。

■まちづくりとのつながり
村岡 歴史館や文化遺産を今後のまちづくりにどうつなげていけばいいでしょうか。
福岡 佐賀市内はクリークが多く、水郷と呼ばれていた。残念ながら、佐賀城の東堀は埋められてしまったが、復元し、堀の景観を生かすべきだ。「三十六万石まつり」を開催し、佐賀人のアイデンティティーの拠点にしてはどうか。
◆掘り起こす努力必要 川本氏 
川本 地元にあるものを生かすこと。歴史も文化も自然も急にはできない。
作ろうとすると膨大なお金がかかる。ゆっくりした歴史、文化を生かしたまちづくりをお願いしたい。地域に眠っているものを掘り起こすべきだ。
◆まちにドラマ性大切 宮副氏 
宮副 まちに、ドラマ性を持たせることが大切だ。「副島種臣の住居跡」などの表示があれば、何の変哲もない場所が輝きを持つ。ちょっとした仕掛けだ。派手な看板など景観からマイナス部分を取り除き、昔の良さが体験できるようにするべきだ。
◆武士道精神を次代に 村岡氏 
村岡 佐賀にも世界レベルのものがある。情報発信できると全国から来てもらえる。佐賀の精神文化も素晴らしい。武士道で、明治期は世界に冠たる佐賀だった。今後も大事にしたい。
古川 佐賀が最も輝いていた幕末・維新期や武士道の精神を受け継ぎ、その精神に立ち返って佐賀の今後を考えたい。きれいな佐賀にしようという気持ちも大切。何をするにも美しさを大切にしたい。

■感想
村岡 最後に、結論というか感想を。
福岡 有明海は昔、中国とつながっていた。日本書紀のころ、佐賀平野は葦(あし)の生えた場所で、その結果、吉野ヶ里ができた。歴史や地史を調べるとまだまだ眠っている。歴史館が、アジアとの交流を考える拠点になるのではないか。
川本 歴史館は十五年前から計画されていた。ここになって急に利用法の検討を県民に求めるのも問題ではなかったか。急場しのぎでなく、発掘したものを磨き上げ、県内に点在するものを発信してほしい。
宮副 観光には六大要素があり、三つそろえばいいと言われている。「歴史」「景色」がある佐賀には、もう一つ「物語性」が眠っている。この三つを生かし、県民で力を合わせ歴史と文化を生かした佐賀の観光をつくっていければいい。
古川 非常に刺激を受けた。これまでハコモノをつくる時、活用法などについて一部の専門家だけで決めていたと思う。今後は、ルールを決めた上で、つくる時から県民と一緒に考えることが必要。佐賀の魅力発揮のためにも県民と一緒に考えていきたい。
村岡 歴史館は自然、歴史などにはぐくまれた、精神性を豊かにする拠点になるのではないか。人間は環境が大事で、佐賀ほど環境が優れたところはない。いろんな形で県民が参加して、歴史館を財産として活用できればありがたいと思う。
(発言の際の名前は敬称を略しました)
--------------【2/19記事】---------------------
◆佐賀城歴史館 拠点に活性化
「第十回よみうり・西部フォーラム佐賀会議」(読売新聞西部本社主催)が十八日、「佐賀の歴史的文化遺産をどう生かすか」をテーマに、佐賀市の市民会館で開かれた。古川康知事の特別講演と、村岡総本舗社長の村岡安廣委員がコーディネーターを務めてパネルディスカッションが行われ、活発に意見が交わされた。最後に、佐賀市の佐賀城本丸歴史館(仮称)の八月の開館をきっかけに、佐賀の歴史と文化を再考し、今後のまちづくりにつなげていくよう呼びかける提言をした。
佐賀会議は、市町村合併や水環境など地域社会の課題や将来像を様々な視点から検証することを目的に、一九九四年度から毎年一回開かれている。

会議では、まず読売新聞西部本社の和田泰生編集局総務が「佐賀城本丸歴史館の開館をきっかけに歴史と文化を、どう将来に引き継いでいくかを考えることが重要だとの思いで企画しました」とあいさつ。続いて古川知事が「知ることからはじめよう」のテーマで特別講演。「佐賀のことをもっと知ろうという県民の意識が高まれば、さらに、まちを大切にしようという思いが生まれる」と訴えた。

続くパネルディスカッションでは、郷土史家の福岡博委員が「歴史館を拠点に、お堀の景観を生かし、県民が一体となった祭りを開催してはどうか」と提案。

地域情報プロデューサーの川本喜美子委員は「地域に点在する文化を一つにまとめ、歴史館から情報発信すべきだ」と指摘した。
 
佐賀広告センターの宮副直記委員は「まだ知られていない文化に、ロマンやドラマ性を持たせる仕掛けをすれば、文化を観光にもつなげられる」と訴えた。

委員も務めた古川知事は「歴史館は、当時の雰囲気を十分に感じてもらい、葉隠の精神を検証する場にしたい。県民と活用法を考えていきたい」と語った。

村岡委員は「歴史館を豊かな精神性をはぐくむ場所にするためには、県民が参加し、一つの財産として活用すべきだ」とまとめた。