「日経BPガバメントテクノロジー」2007年秋16から転載
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070906/281351?/p=2
特別講演1
組織・地域に変革を起こすCIOの役割
CIO=Chief Information & Innovation Officer
佐賀県知事 古川 康
第5回 CIOフォーラム 年次総会
2007年8月30日〜2007年8月31日 武雄センチュリーホテル(佐賀県武雄市)


総会初日、会場となった佐賀県の古川康知事による特別講演が行われた。佐賀県では、改革を進めるうえでCIOは重要な役割を担っている。CIOの“I”は“Information”だけでなく“Innovation”でもあるべきだ、と古川知事は力説する。

 佐賀県庁では現在「佐賀県庁『改進』プラン」を進めている。基本理念は「オープン」「現場」「県民協働」の3つで、県政の最終目標は「県民満足度を高めること」としている。

 取り組み内容は組織再編や人事システム、業務改善などいろいろあるが、特に重要なのが組織の再編だ。国政に沿った形での総務部を頂点とする組織をガラッと変え、2006年4月からカンパニー制へ移行した。カンパニーは「くらし環境本部」といった名称が示すように「何をしなくてはいけないのか」といったところを起点にしている。

 例えば、くらし環境本部にあるこども課では、今まで教育委員会や厚生部に分かれていた保育所や幼稚園などをまとめて担当している。そのほか、健康福祉本部、農林水産商工本部、県土づくり本部と分かれている。農林水産商工本部は昔の経済部という感じにまとめた。

 CIOが置かれている統括本部には「県民のために役に立つこと」をエンジンにしながら、各本部を束ねて県政を運営する役割を持たせている。以前「総務部」と呼ばれて予算や人事を担当していた部署は経営支援本部という名前にして一番後方に位置付け、各カンパニーを支援する。

 かつての財政課や人事課は「押さえつける」「管理する」という考えから免れなかった。しかし統括本部は管理をするのではなく、むしろ県政の目的を達成するために、各本部の尻をたたく役割を担う。経営支援本部は予算権や人事権を含めて各本部にかなり権限委譲してしまったので負担が軽くなった。そこで各本部の仕事がしやすいようにフォローする役割を担うことになっている。

 予算編成も大枠で渡された予算を各本部が編成する。予算を余らせて来年度に回したり、来年度の予算の前借りも可能だ。まだすべてがうまくいっているわけではないが、方向としては間違っていないと思う。

業務改革もCIOのミッション

県政の中では、知事、副知事、統括本部長に続いてCIOである最高情報統括監が位置付けられている(図表1)。CIOは非常に重要なポストで、公募で来ていただいた。その際には3箇条9項目のミッションを設定した(図表2)
これらのミッションを設定し、私もそれに必要な人的および財政的支援を約束して実施している。

 多くのCIOが思っていることだと思うが、ミッションを実行していくためには、庁内の情報化に関する権限だけでは不十分だ。佐賀県の事務処理規則の中にはCIOの仕事として業務改革に関する項目を入れており、IT化だけがCIOの仕事ではない。

  CIOの皆さんは、県庁での仕事の仕方で無駄に感じていることがあると思う。ITとは全く関係ない部分でも、こんな無駄なプロセスをやめた方がいいと思われることもあるだろう。そうした場合に、例えば財政課との協議の際に「これをやめた方がいい」と指摘しても、「何の権限があるのか」と言われたことはないだろうか。そこで私はCIOに業務改革についての責任と権限を持ってもらったのである。

 世の中には良いと思ってもできないこと、分かっていても内部からは変えられないことがある。そこで、別の視点から変えていくということをCIOに期待している。

 佐賀県のCIOの仕事は「県庁の情報化」「地域の情報化」「業務改革」「地域IT産業の育成」の4つで、その守備範囲はどんどん広がっていると感じている。

 これからのCIOの役割は、暮らしを豊かにするという意味における「ユビキタス・ブロードバンド社会の実現」「バックボーンとしての県庁情報システムの全体最適化」、さらに県職員自体をそういった時代に合う人材に変えていくことも必要となる。また、「事務効率化の支援からマネジメント支援へのシフト」や「地方自治体間の連携」にも大きな役割を担う必要があると考えている。

 CIOは“Chief InformationOfficer”であるだけではなく、自治体と地域のInnovationについても担う“Chief Information & InnovationOfficer”になっていただきたいし、皆様はそれができると信じている。