月刊ニューメディア 8月号
 発行日:平成18年8月1日
 発行所:潟jューメディア
特集:ケーブル事業ガチンコ勝負物語
「ブロードバンド王国佐賀」
無線と有線のハイブリッドでBB王国実現を図る

Special Governor Interview 古川 康 FURUKAWA Yasushi 佐賀県知事

佐賀県はケーブル王国だ。佐賀県内ケーブルテレビ事業者による佐賀デジタルネットワーク(SDN)の存在は、佐賀県の地域情報化を推進する上で重要な役割を果たしている。佐賀県知事に今後の佐賀県の情報化事業をどのように推進していくのかを聞いた。答えは「ブロードバンド王国佐賀」づくりだ。また、現在佐賀県で、最大のブロードバンド(BB)ネットワークといえば、SDNである。SDN幹部に佐賀県内における大手通信事業者とのガチンコ勝負の状況や今後の事業計画などを話し合っていただいた。(構成:天野昭/特別協力:SDN+NECマグナスコミュニケーションズ+i-HITS)

2008年度までにBB接続可能率100%

 私が県政を担当して3年経ちます。これからは情報化というものがいろいろなことをやっていく上でのベースになると訴え続けてきました。生活をはじめ仕事をしていく上でも必要不可欠なものだと考えています。おかげで佐賀県では、ケーブルテレビである程度ベースがあるということもありますが、これから飛躍的に佐賀県を伸ばしていくための発射台はできてきたかなと思っています。
 マニュフェスト(公約)の中で、ブロードバンドを90%以上接続可能にしていく、というような具体的な目標を掲げてきましたが、それは2005年度で達成しました。次なる目標としては、2008年度までにブロードバンド接続可能率を100%にすることです。また、実際に使っていただける人の割合、即ち加入率も50%以上にしたいと考えています。。現在の接続可能率は98%ですが、問題はその先が難しいということです。また、加入率については、魅力のあるコンテンツがなければなかなか皆さんに使っていただけません。いずれも大変だとは思いますが、大変でなければミッションにする必要はありませんので、こうしたものの実現によってまさに「ブロードバンド王国佐賀」が実現できると思っています。
 BBの回線はさまざまあると思っておりまして、佐賀県の場合、ケーブルテレビが普及していますので、ケーブルテレビの回線を時代に即応して変えてもらうということが、メインの動きの1つとしてあります。もちろん、無線LANの最新の技術などもありますし、ほかの民間の企業からもいろいろな技術の提案もきていますので、そういったものをいろいろ混ぜて、そこはまさにハイブリッドな形でのBB王国を構築したいと考えています。
 特に佐賀平野のように平らで広いところでは、逆に有線より無線を使うことによって、非常にローコストで広いエリアをカバーすることも可能ではないかと思っています。

地デジ普及は徳島県と同じ条件

特に佐賀県南部の佐賀平野のエリアは電波銀座なんですね。であるが故に、福岡からも熊本からも長崎からも電波が入ってくるので、逆に地元のメディアが育ちませんでした。
 徳島の飯泉嘉門知事と意見が合うのもそこなんです。徳島県も同じような立地ですからね。佐賀県の場合は、地元民放1局のみで、あとは県外波の“漏れ波”を見ているという状況です。その意味でも、もともと免許上、佐賀県をエリアとする民放がほとんどなかったということが、逆にケーブルテレビの発達をもたらしたと思っています。せっかく発達しているケーブルテレビをもちろん使ってということもあります。繰り返しになりますが、佐賀県の特性はほかの県とは違いますので、電波行政は国の仕事ですが、我々は佐賀県民の生活をみながら、それが今回の地上テレビ放送のデジタル化の流れの中でおかしくならないようにウォッチしていく義務があると思っています。

SDNの中継で県議会が変わった

SDNができたおかげで、一番顕著に違ったのは県議会です。県議会が今、SDNによって全県に配信されるようになりました。唐津に住んでいる私の両親も、私が県議会でどのような答弁をしているか、よく知るようになりました。これは、コンテンツとしては非常にヒット商品だと思っていて、議会の議論を果たしてどれだけの人が見るかという疑問もありましたが、実際にやってみると全然違いますし、何よりも議場の後ろにはケーブルテレビを通じて見ている県民がいる、ということです。これは質問をするほうも答えるほうも、しっかりと見られるようになりました。これは大きな成果だと思います。あと、高校野球の中継なども行っていますが、佐賀アイデンティティの部分で言えば、県内民放の弱い地域というのは、どうしてもローカルニュースの薄い部分というのが出てきてしまいます。ローカルニュースの薄い部分をケーブルテレビがきちんと補う。いわば、ローカルについては民放以上にしっかりと補う、さらにプラスアルファでやっていくことで、自分たちがこの県にいるんだとか、この地域で生活しているんだということを、より多くの人に知っていただくことができると思います。私は、ケーブルテレビに対しては、県を単位にしたコミュニティの確立、あとは世界につながる情報発信の両端を期待しています。

コンテンツ制作と発信に注力

我々がこれから力を入れていく部分は、従来のように道路などだけではなく、こうした新しい社会資本整備にもしっかりと目を向けて、ミッションとしてとにかく2008年度までにこれだけやると決めているわけですから、実現できるようにサポートしていきたいと思います。
 コンテンツのことでいえば、来年佐賀県でインターハイが開催されます。これを全種目中継してもらいます。ケーブルテレビだけでなく、もう少し素人の人たちにも入ってもらって、BBの技術を使って全部やってみようじゃないかという、いわば実験のようなことも考えています。そういったことを積み重ねることによって、自分たちが全国、全世界に向けて情報発信できるような技術を身につけてほしいと思います。

恵まれている地理的条件

今、ある証券会社のファンドで北部九州ファンドというものがあるそうです。北部九州に拠点を置いている企業の株を組み込んだ商品が作られているのです。これはなぜかというと、北部九州に拠点を置いている企業が伸びるからです。こうしたものに現れるように、今これから中国を見据えて、これまで製造一辺倒だった九州に、だんだん頭脳拠点ができつつあるということだと思います。例えば今、トヨタさんでいえば吉林省でプリウスを作っていますし、九州でもプリウスをはじめとするハイブリッド車の部品を作るようになりました。そういう意味では、単純に物を作るというところから、付加価値が高いところにシフトしていこうという動きが、北部九州に出てきているというのは、非常に大きいと思います。私たちも毎日たくさんの時間を割いて、今後のアジアとの関係について議論しています。これはやはり佐賀県の位置に関係しているからだと感じています。

厳しい予算でもBB化には特別配慮

佐賀県は焼き物の産地のため、有田に焼き物の技術を磨く学校があるのですが、単に轆轤を回し焼き物の技術を磨くだけでなく、焼き物について専門性を深めるなど、情報発信をしていくことが必要だと思います。もっと専門性の高い人材を育成していくことが、これからの我々の仕事なのではないでしょうか。
 あらゆる意味において、情報化の進んだ地域であるということは、これからの地域づくりにおいて、一番最初に出てくる話だと思います。これが出来ているかいないかだけでも、全然違います。例えば小学校の先生ですら、一人1台のパソコン使用率を実現できていない地域は、子どもたちに対する情報化教育もきちんとできません。今交付税も削減され厳しい状況ですが、一見後に回してもいいと思われがちな情報化関連の投資やケーブルテレビへの支援などは、実は住民にいろいろな意味でアクセスできる環境を整えれば、地域の理解にも有効ですし、がんばろうという気持ちにもつながります。市町長をはじめとして自治体の担当者には、その大切さを是非わかっていただきたいと思います。
 県の予算も厳しい中ですが、BB化関連の予算については優先的に認めています。まずそうやってBB王国佐賀の実現にむけて、市町と一緒にやっていきたいと考えています。