| 2003年11月20日 毎日新聞掲載 | |
| 4知事地方分権改革を展望 毎日新聞が実施しているシリーズ会談企画「知事が問う 日本の選択」第2弾で、石川 嘉延・静岡県知事、浅野 史郎・石川県知事、木村 良樹・和歌山県知事と古川 康知事に、第43回衆院選の結果を踏まえ、今後の地方分権改革を展望してもらった。それぞれに改革を進める4知事は、マニフェスト(政権公約)が取り入れられたことを評価。ただ真の地方分権が実現するかは、今後にかかっているとの認識を示した。 会談は14日、毎日新聞東京本社であった。古川知事の発言を中心に、会談の模様を紹介する。 知事が問う 日本の選択 古川知事の発言紹介 マニフェスト 地方の立場では疑問も <私は4月の知事選で、マニフェストを掲げました。大統領制と同じ地方自治制度では、首長選の候補者がマニフェストを掲げたとしても、当選後に議会の賛成を得られるかどうかは別問題で、確実に政策を実現できるという保証はありません。そこが議院内閣制の下で、政権をかけて戦う国政選挙と大きく異なる点です。それでもローカルマニフェストに政策の数値目標と財源をしっかり書き込むことは、とても大切なことです> 古川知事は今春の知事選で、「マニフェストへの試み」と題した49項目の政策要綱を掲げた。 古川知事は今回の衆院選についてこうも語った。 <2大政党制に賛成ですが、地方の立場では疑問もあります。政党が前面に出るマニフェスト選挙が進展していけば、国政の場で地域的な問題が争点にならなくなるかもしれません。今後は地方の人の思いを、どう国政に反映させるかが問題になってくるでしょう。> 木村知事は「自民も民主も地方分権を進めるとマニフェストに載せた。これだけ話題になり、国民との約束事になると『きちんと補助金を削って税源移譲しないと、具合悪いな』という方向になる」と分析。 浅野知事は「マニフェストが結構、大事だと分かった。何年後か、何十年後かに03年の衆院選が節目だったかなと評価される可能性がある」と語った。 石川知事は「マニフェストを充実させるためにも政党はは政策立案能力を高める必要がある」と指摘した。 三位一体改革 メリット説明すべきだ <佐賀県では今年10月、三位一体改革を進めたら住民にどんなメリットがあるかを発表しました。 例えば、スクールカウンセラーは年間280時間在校しないと補助金がもらえない。 だから、問題のある学校に別の学校のカウンセラーが手伝いに行こうとしても補助金がもらえないため、別に予算を計上する必要があり、事実上、出来なくなっている。 補助金が一般財源化され、県が自由に使えるようになれば、必要な所に人を配置できる。このような具体的事実を一つ一つ説明するしかないと思っています。> 三位一体改革について、佐賀県が10月に発表した独自案は、国の補助金を5兆円削減する内容で、地方への税源移譲対象として消費税を挙げ、具体的な手法にまで触れたのが特徴だ。 会談で、木村知事は「霞ヶ関の官僚が補助金の配分を決め、自治体がその下で使うという考えを変えなければならない。それをいかに国民全体の合意にしていくかが、我々の役割」と力説した。 浅野知事も「これまでの地方分権とは質的に異なる。払った税金が一度、国に入るようなシステムでは民主主義はあり得ないことを、説得力を持った言葉で説明するのが知事の宿題」と強調した。 また「今後3年間で補助金を4兆円削減する」政府の方針について、石川知事は「4兆円という額より、何から手掛けるか順番が非常に重要だ。義務教育国庫負担金から始める案があるようだが、もっと必要なものからやらないといけない」と注文。補助金の整理・合理化よりも「交付税、あるいは交付税を主体にして地方団体の財政をどう設計するかが大切だ」と訴えた。 <(交付税の配分方法は)地方にとって良い方法がいいと思う。独立組織として地方財政委員会みたいなものがあって、そこが分配する方法もあるだろうし、全国知事会がやってもいい。 全国知事会がやる場合の問題は、東京の人は都の税として納めたものが他の県にとられてしまうわけで、そこを東京のタックスベイヤー(納税者)にどう理解してもらうかというところが問題と思う。 3年間で4兆円の地方への移譲をやろうということは閣議決定で決まっているわけで、今回の予算編成は一里塚。ここで何億円、何兆円というのではなくて、3年間かけてやる道筋を作ってくれればいいと思う。> 浅野知事は「(交付税の)配分権は地方が握るべきだと思う」としたうえで「分ける時に問題となるのが、都道府県における税収の格差。補助金が廃止された場合、東京都や大阪府を除き、税収が大きく減り、ますます交付税への依存が高まる。やるなら補助金も交付税も同時決着」と述べた。 これに対し、石川知事は「(都道府県が)自主的にやったんでは絶対に決まらない。東京が合意出来なければ決まらないということになりかねない」と指摘。「結局、国民全体を代表する政府が決める。問題は、その政府の決め方を国会がちゃんとチェックできるかどうかだ」と述べた。 木村知事は「自治体制も責任を持って自分たちのことを考える時代になりつつあり、国の役所が細かいところまで決めていく仕組みを見直していかなければ」と主張。「利害の対立はあるかもしれないが、それを克服するのが本当の自治だ」と語った。 道路 まず地域間道路を整備 <私が目を通し、必要だと思う道路工事は少なくとも必要だと思っていますが、すべて見ているわけじゃないから無駄なものもあるかもしれません。私は国にまだ金があるうちに、国と一緒になって地域と地域を結ぶような幹線道路を早く造ってしまいたいと考えています。 必ず産業的にもプラスになると思うからです。これからは国に頼る時代じゃないので、自力で税源確保していくためにも、こういった道路が必要だという信念でやっています。 ただ、優先順位や工事のスピードを地方が自由に決められないという問題はあると思います> 会談で浅野知事は「問題は、優先順位と負担の関係。ほかのものは我慢するので、この道路を建設したいというのは無駄ではない。そのためには地元も負担するということがあってもいい」と語った。 木村知事は「道路公共事業が地域経済の中でどんな役割を果たし、今後どうして行くべきかという議論をしないといけない」と力説。 石川知事は「道路を筆頭に、公共事業、公共投資を景気対策に使い過ぎたことが問題」と述べた。 ◆三位一体 地方分権を実現するために (1)地方への補助金の削減 (2)国から地方への税源移譲 (3)地方交付税の見直し を同時に実施する改革。補助金は国が使途を特定して地方に配分するお金で、総額は約20兆円に上る。 政府・自民党案は06年度までに補助金4兆円を削減し、義務教育費などの義務的経費は全額、その他経費は8割を地方に税源移譲。 民主党案は06年度までに補助金18兆円を削減し、約5兆5000億円を税源移譲し、約12兆円を一括交付金として分配する内容。 福岡など6県知事が8月、計約9兆円の補助金を廃止し、地方に税源移譲すべきだ発表するなど、地方からの提案も相次いでいる。 ◆マニフェスト 政党や候補者が選挙で、政策の達成期限、財源、数値目標などを具体的に明示した公約集で英国で定着している呼び名。 今年4月の統一地方選に向け、北川正恭・前三重県知事が提唱。今回の衆院選でも、各党がそれぞれマニフェストを掲げた。毎日新聞は政党のマニフェストを「政権公約」、地方自治体の首長のを「政策要綱」と呼んで区別している。 |