構想日本「JIメールニュースNo.312/首長リレーエッセー(16)」

首長リレーエッセー(16)コムスンと原子力発電に見る過剰関与と過少関与
佐賀県知事 古川 康

いささか古い話になってしまった(といっても6月のことなのだけど)コムスンという会社が介護で不正をしたというので処分を受けた。「コムスンの訪問介護事業は指定更新時期まで続けることができるが、その後は指定更新を認めない」という。判断したのは厚生労働省。何か疑問?

この事業所指定という事務は実は都道府県の仕事だ。コムスンの指定をどうするかということについて、厚生労働省から「指示」をされる覚えはないものなのだ。それが証拠に6月6日付けで出されたコムスンの「処分」に関する厚生労働省からの通知には「これは技術的助言です」と書いてある。不思議でしかたない。

一方、先日の中越沖地震で柏崎刈羽原子力発電所が被災した。幸い、安全装置が正常に作動して、「止める」「冷やす」「閉じ込める」という事故への発展を防止する基本機能がきちんと働いたこと自体はよかったが、さまざまな大きな課題を残したのも事実。もとより原子力発電所の規制は国の仕事だからしっかりやってもらわなければならない。そのために、専門家も雇い、わが国最高レベルの学問的知見を活用して規制しているのだから。

ところが、施設の本格的な使用規制という点でまず動いたのは柏崎市長だった。消防権限に基づき、危険物施設の使用停止を命じた。さらに、新聞報道によれば、地震による原子力発電所の被害の情報共有のための国際原子力機関(IAEA)の調査について、国は「受け入れる余裕がない」と断っていたことがわかった。それに対して、新潟県知事が「IAEAの調査を受け入れるべき」と国に対して申し入れ、結局実現することになった。国はもちろん動いていないわけではないのだが、見ているとどうももどかしい。

佐賀県も原子力発電所の立地地域だ。何かあったときには国にしっかり対応してもらわなければならない。エネルギー政策は国の仕事なのだから。コムスンの指定更新における国の過剰関与と原子力発電所のトラブルにおける国の過少関与。ひっくり返っているような気がして不思議でしかたない。

*古川 康(ふるかわ やすし)氏のプロフィール
昭和33年佐賀県唐津市生まれ。昭和57年東京大学法学部を卒業、同年自治省に入省。長野県企画課長、岡山県財政課長、自治大臣秘書官、長崎県総務部長などを歴任。平成15年日本ではじめてマニュフェストを掲げ、佐賀県知事選に挑戦、同年4月知事に就任。平成19年4月新任期スタート。「がんばらんば さが!」をキーワードに「くらしの豊かさを実感できる佐賀県」の実現を目指して県政に取り組む。