| 日本経済新聞 平成15年11月20日 掲載 | |
| 三位一体 改革の行方 『補助金は来年度に一兆円を削減する。税源の地方への移譲も進める』------。 三位一体改革の成果を来年度予算に盛り込むという小泉首相の「突然の指示」に、霞ヶ関の官僚たちは驚きを隠せない。 見えぬ具体像 「初年度の目標としては本来であれば三分の一と言いたかったが」------。 経済財政諮問会議のメンバーである本間正明阪大教授は「指示」が出た18日の同会議後、三位一体改革の議論についてこう話した。 六月に「来年度から三年間で四兆円の補助金を削減」との政府方針を固めてから、所管各省の抵抗で協議は難航。民間議員の抵抗をもとに首相指示を引き出し、ようやく一歩踏み込むことに成功した。しかし、表情はいまひとつだ。 今の段階で削ることのできる一兆円の補助金の対象は全くわからない。 財務・総務両省は、公共施設の運営など自治体の仕事として定着している58の補助金をようやく削減する方針を固めたが、足しても千億円。 それにもかかわらず「国の仕事を都道府県などにやってもらう交付金を廃止するのは問題」(炭谷茂環境事務次官)と関係省庁は早速反発。役所の厚い壁を乗り越える作業は容易ではない。 一兆円の目標達成という数字合わせに走れば、玉虫色の決着につながるおそれもある。 都道府県が払った小中学校教員給与などの半分を国が賄う義務教育費国庫負担金。 二兆七千億円と補助金中最大規模で見直しの焦点だが、谷垣禎一財務相が掲げた"交付金"の切り替えでは改革と呼びにくい。霞ヶ関が使途を縛る「ひも付き財源」を地方に配る仕組みに変わりなく、地方が望む税源移譲には結びつかないからだ。 「国と地方の財源争いでなく、住民の満足度を上げる行政サービスの実現という視点がなければ三位一体改革は国民を巻き込んだ大きな渦にならない」------。古川康佐賀県知事は権限に固執する霞ヶ関の体質に批判的な目を向ける。 指導力が鍵 古川知事は補助金削減と税源移譲で地方に仕事を任せれば、住民ニーズに合った柔軟なサービスが提供できると強調。補助金とそれに伴う規制で、地域の実情に合った行政サービスが提供できてない事例を列挙、例えば定員標準や屋外遊技場などの設置義務付けがあるために、オフィスビルの空室に小規模保育所を設置できないといった問題を指摘する。 小泉首相は衆院選を終え、地方の声を吸い上げながら改革を進める考えを鮮明にした。首相の発言を表向き地方は歓迎する。だが、動き出したようにみえる改革も、ほぼ半年近く調整を怠ってきた省庁に委ねるだけでは、帳尻あわせで終わりかねない。自ら退路を断った首相の指導力を生かし、改革の本来の目的に近づける必要がある。 |