2003年12月16日
Q:438への読者からの投稿
□古川 康 :佐賀県知事
■質問:村上龍========================================================
Q:438
小泉首相は、2004年度は「地方への補助金を1兆円削減するように」指示したようです。補助金を減らされる地方はどこに財源を求めるのか。
どの税が移譲されるのか。
全国の都道府県・市町村に対し、どうやって「公平に」1兆円の削減を行うのだろうか。というように、いろいろな疑問が浮かんできます。地方への補助金の1兆円削減という問題をどう考えればいいのでしょうか?

□読者投稿:古川 康

もう、10日以上も前のことになってしまいますが、いよいよ地方への補助金1兆円削減が決まりましたので、このことについて、私なりの意見を述べたいと思います。
この間、私自身がこの問題について当事者として動いていて、この場でタイムリーに発言できずに残念でしたが、現場にいるトップとして考えていることを申し上げます。
このJMMはさるメディア関係の友人に2、3年前に教えてもらいました。海外からの発信を含め、多方面からのアプローチが楽しく、政策決定においても参考にしています。ところが、経済については、各回答者の方の切れ味がシャープなのに、こと内政に関する限り、どうも遠慮がちで議論をそらすか、一般論で終わっている感じがあり、やや不満があります。なぜかといえば、どなたも現場をご存じないということではないのかと思っています。
補助金1兆円削減の意味自体は、すでに6月27日に「骨太の方針2003」において、平成18年度までに4兆円の補助金を削減することが閣議決定されました。そして地方が引き続き実施する事業については基幹税を基本として税源移譲すること もそこに明記されています。今回はそのうちの一部が実施されるということですから、ある意味、特段びっくりするようなことではありません。驚くのは総理の熱心さで、これまでどちらかといえば、内政に関しては財務省の言うことのみを「丸呑み」しているように見受けられたのですが、今回の判断については、地方側が驚くような進め方でした。
ただ、奇怪な点もあります。今回の補助金削減は、この骨太方針に従えば、国家財政の破綻を救うのが目的ではなく、地方分権推進の一環として実施するものです。 地方分権の推進のために国から地方への補助金を削減し、その分を地方の税源とするという政策を、いつのまにか、補助金の削減だけは各省庁にしてもらっておいて、地方への税源移譲についてはしらんぷりというのでは財務省もいささか品がないのではありますまいか。
私から見ると、財務省は、自分たちではなかなかできなかった補助金削減を地方分権の御旗の下でやろうとしているということに見えてしまうのです。
地方側は、補助金削減の分すべてを地方によこせといっているのではありません。義務的なものは10割にしても、奨励的な補助金は8割程度でけっこう、つまりは2割は削減を了解します、と言っているのです。そこをわかっていただきたいと思います。なぜ、補助金ではいけないのか。佐賀県ではこの三位一体の改革が、国と地方の財源争いになってはいけないということで、佐賀県独自の提案「プロポジション10・16」を公表しています。
私の基本的な考え方は、答えは現場にある、ということです。いいかえれば、現場により近いところの判断を尊重して事業を実施するほうがより住民満足度の高い行政サービスが実現できる、ということです。たとえば、高齢のご夫妻で、奥さんが倒れ、特養に入ることになった。これはよくある話です。奥さんが倒れると、困るのは夫です。私たちの見るかぎり、妻が施設に行った後、一人で残っている夫は、半年くらいで要介護になるケースが多い。それを予期してか、奥さんが特養に入所するとき、自分も入れてくれ、お金は払うから、と言われるケースがままあります。ところが補助金で作った特養にはそういう夫を入れることができません。これが、もし補助金ではなく、自治体の一般財源であれば、その自治体の裁量によって、夫婦で入ることのできる施設を作ることだって可能です。では現実にはそういう夫はどうしているのでしょうか。特養と同じ敷地内に作られていることの多いケアハウスに夫が入っています。ケアハウスは、お金さえ払えば契約で入ることができるからです。そして、本当はいっしょに暮らしたい夫婦が、織姫と彦星のように施設の中庭で会ったりしている風景というのが、補助金のこっけいさの象徴なのではないでしょうか。
このほかにも、この「プロポジション」の中では、たとえば建設後10年以上経たないといくら空き教室になっても教育以外に使わせない学校の建物に対する補助金、という問題も指摘しました。ただ、これについては、先日の新聞記事では、文部科学省は、公共目的であれば10年未満でも転用を認めるという方針を出すことにしたとのこと。これは佐賀県の指摘に応じた運用改善だと私は考えていて、これについては高く評価したいと思います。すべては、住民満足度の高い行政サービスの提供のために。それが三位一体改革のめざすものでなければならないと考えます。

プロポジション10.16は次のURLでごらんいただけます。  http://www.pref.saga.jp/

佐賀県知事:古川 康