| 時事評論(外交知識普及会 発行) 2005/2月号掲載 |
|
| 後に続く人たちのために 佐賀県知事 古川 康 | |
ここに「二〇〇四年版佐賀県職員録」がある。これはほかの職員録とはちょっと違った点がある。「特定非営利活動法人かっぽネット」発行なのだ。 このNPOは身体障害者の生活支援や働く場を作ることを目的にして活動して いる団体だ。そこが発行することになったのは二年前のある意見交換会がきっかけだった。 「県民協働」を県政のテーマに掲げる佐賀県では、今では「県民協働」の対象 をNPOだけに限らず地縁的な団体である老人会や婦人会なども含めてCSO (市民社会組織)という概念で捉えていて、CSOと行政が一緒になって県政を進めて行くという考え方に立っている。二年前は発想がそこまで至らずNPOとの意見交換会をやったのだったが、その中であるNPOの役員からこんな意見が出たのだった。 「これまで随意契約で県職員OBの親睦会に発注していた県職員の職員録をNPOにさせてもらえないか」 この意見に当時の人事課が応じた。職員録の印刷が入札に付されることになり 、その結果、「かっぽネット」が県職員のOB会を抑えて受注したのだった。 競争の機会が与えられた結果だけに僕もよかったなと思っていた。しかし作業 は順調ではなかったようだった。 ある日そのNPOの役員から僕あてにメールが届いた。納期に間に合いそうにない、という内容だった。「原稿の入稿が遅れたのですか?」と尋ねてみた。 答えはノーだった。慣れない作業だから遅くなっているのだという。「だとしたら」と僕はさらにメールを書いた。「納期に遅れることは許されません。何としてでも納期に間に合わせてください。そうしないと"だからNPOに頼むのはだめだ"といわれかねません。後に続く人たちのためにもどうかお願いします」。レスが来た。「わかりました。間に合わせます」 納期の日の朝、新聞受けの中に一冊の真新しい職員録が入っていた。約束は果たされたのだった。 知事部局の職員の名刺がほぼ全員変わるような組織改正だったこともあってい ろいろミスがあったことは否めない。しかし、これがひとつの実績になったことは事実だ。 CSOとともに歩む県政、これからもかたちにしていきたい。 |