| 2008年9月4日(木)1365 地域企業の繁栄をサポートする経営情報誌 企業特報 INFORMATION BANK I・B(アイビー)掲載 株式会社データ・マックス発行 |
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| 九州新幹線 未来への軌道 特別寄稿インタビュー 「新幹線が縦横に走る唯一の県 九州の交差点に仕掛けるプラン」 |
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| 佐賀県知事 古川 康 | |
今年4月、博多駅を起点に新鳥栖、佐賀、肥前山口、武雄温泉、嬉野温泉の5駅を結んで佐賀県内を貫く「西九州ルート」の起工式が行われた。一方、新鳥栖駅は、2011年に全線が開業する「鹿児島ルート」の停車駅でもある。両ルートが完成すれば、佐賀は新幹線が縦横に走るという国内唯一の県となり、九州を縦横に走る高速軌道の結節点という重要な役割を担うようになるが、その位置関係を県勢拡大にどう活かしていくのか。古川 康・佐賀県知事にさまざまなアイデアを聞いた。 |
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インフラの柱・新幹線 ‐‐‐‐着々と進められている九州新幹線の整備に対する期待感をお聞かせください。 古川:インフラ整備は、地域全体として地域外とのコミュニケーションをうまくやっていくためのツール整備といえるところがありますが、新幹線は、そうした意味合いのインフラとして大きな柱となるものです。 鹿児島ルートの全線開業と将来の西九州ルートの開業で、佐賀は新幹線が縦と横に走る珍しい地域になります。この点を地域全体のポテンシャルが顕在化する方向で、大いに、また確実に活用していきたいと思っています。 ‐‐‐‐悲願の西九州ルート着工にまでこぎつけましたが、これについてのご感想は。 古川:ようやくスタートラインに立つことができたという心境ですね。 アジア地区予選で苦しみながらワールドカップ出場権を掴んだサッカー日本代表の心境というところでしょうか。 出場できることになったのは嬉しいことですが、それで終わりではありません。新幹線も同じようにつくって終わりというわけではありません。何とか予選はクリアできたけれど、今度は本戦で頑張らないといけません。 マスタープランのモザイク ‐‐‐‐鹿児島ルート全線開業は、佐賀を新幹線ネットワークに組み込みます。これより佐賀は、北九州市、福岡市という北部九州の二大都市圏に加え、関西圏までを視野に入れられる地域となります。さらに将来の西九州ルート完成は、大都市圏との直結効果を県内にもたらしますが、他の地域から人を呼び込むための、県として描く戦略をお聞かせください。 古川:現在、県内全市町に対し、新幹線をどう活用するかについてのプランをつくるよう、お願いしています。市町に個別のプランを練ってもらいますから、その色合いはもちろん違ったものになってきます。それが好ましいわけで、各市町が新幹線開業に向けて、それぞれの風景を描いてもらうことが狙いです。 自分たちの地域ではこういったものを描けないだろうかと考えてもらい、それらを県が総合してモザイク的に仕上げ、新幹線効果をより効率良く取り込んでいけるものに持っていければと考えていまうす。 バリアフリーの観光地 ‐‐‐‐具体的にはどのようなものが考えられますか。 古川:大切なのは「駅をつくる」のが終わりではないことです。 たとえば、西九州ルート5番目の駅となる嬉野温泉では、10年先を見据えて「ユニバーサルデザイン」がもっとも進んだ温泉街・観光地をつくっていこうという計画がすすめられています。 つまり、シニア世代の方々が新幹線駅から自動車を利用することなく、街の中へ観光に行ける街づくりです。車いすのまま新幹線を降り、バスに乗って、そのまま旅館に行ける街にする。今人気の温泉街は、たいてい山あいにあり、嬉野のような平地の温泉街は目立ちませんが、シニア層の機動性を考えれば、逆に「平地」ということを魅力として活かすべきだと思います。 すでに嬉野では、バリアフリー観光のための旅行センター(佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター)が立ち上がっていますし、大きな旅館では車いすのまま入れる部屋をオープンさせています。新幹線効果に加えて、街そのものの魅力を高め、2次的、3次的効果を呼び込むための準備は地道なかたちで進められています。こうした取り組みの効果を高めてくれることは間違いありません。 通勤圏拡大効果 ‐‐‐‐いずれの県でも、各市町村の中心市街地衰退が大変な問題となっていますが、新幹線整備はこの問題に対して何か効果をもたらすのでしょうか。 古川:佐賀市の例を見ると、福岡都市圏の職場に通う人たちが増えているということもあって、中心商店街の中にある学校の生徒数が少しずつ増えてきているということがあります。JR九州によれば、去年1年間で販売された特急定期乗車券であるエクセルパスが一番利用されている区間は、佐賀〜博多間だということです。福岡との「良い距離感」が佐賀の強みになっているわけですが、県内の新幹線整備の進捗はこの距離感を一層良いものに変え、中心市街地にプラスの影響を与えるかと思います。 県民の夢 ‐‐‐‐知事は「新幹線は夢」「地域経済の起爆剤」と仰っていますが、3年後の鹿児島ルート全線開業、また2019年の完成を目指して整備が進められていく西九州ルートについて、県民の代表としてどのようなリーダーシップをとっていかれますか。 古川:夢として、また地域経済の起爆剤としての新幹線の開業・整備を、県民の皆さんで実現していく努力が必要です。その目標に向けて、開業前にできることが2つあります。 地元でつくるという意識 ●発注しやすいシステムを構築 1つは、来年から本格的に工事が始まる西九州ルートに関して、土木工事はもちろんのこと、建設・整備にかかわる必要なものは、鉛筆1本、弁当1つ買うにしても、地元のものを使っていただく、県内の人たちの力を利用していただく、という仕掛けを考えることです。新幹線を整備する鉄道・運輸機構(以下「機構」)は「その辺はわかっている」と言ってくれていますが、まだまだだと思っています。 地元の働きかけが足りない部分もあり、そのままにしておけば、新幹線の建設現場で使う鉛筆の発注が中央大手の事務用品通販会社などに全部取られてしまいます。鉛筆1本だから中央大手に取られても大したことではないという意識ではいけません。どんなものでも私たちにやらせて下さい。という姿勢がなくてはならないと思っています。姿勢だけでなく、機構側が鉛筆1本からでも地元に発注しやすいような仕掛けも必要です。具体的には、発注を受けて即調達・納品という対応が可能な、地元の人々による事業組合をつくれば良いのではないかと考えています。そのような発注者側のニーズに応える仕掛けを考えて、鉛筆1本からでも地元で調達できる仕組みを築き上げ、新幹線工事が始まって良かったね、と地域で喜んでもらえるようにしていきます。 ●JVへの地元企業参入 土木工事についても、新幹線の場合は3社JV(ジョイントベンチャー)で実施する工事が多いのですが、そのうち1社は地元業者を必ず参加させてくれと訴えています。私たちの県税というかたちで負担額を拠出しますが、相当のお金を出すわけで、人のお金だけで新幹線の建設を進めるわけではありません。建設工事への地元企業参入にしても、「お願いします」だけではなく、きちんとした提案を地元としてやっていきます。 新鳥栖駅の可能性 ●大駐車場構想 もう1つは、県内の鹿児島ルート唯一の駅として先行して設置される新鳥栖駅をどう活かしていくかということです。これを県内の西九州ルート整備への良い見本にしたいと考えています。 鳥栖市は、鉄道や高速道路で、佐賀、長崎へ行く場合でも、必ず通らなければならないポイントです。現時点でも鹿児島ルートの運行計画を見てみると、新鳥栖駅に停車する列車は1時間に1本です。それを何本まで増やすことができるのかは、今後の私たちの取り組みにかかっています。つまり、新鳥栖駅で乗る人、降りる人を増やす仕掛けが必要ということです。新幹線の利用者の駅までのアクセスを見てみると、車で行く人が多い。ここが狙い目で、新鳥栖駅を、車で来られるお客さまにとって魅力的な駅にするという構想を持っています。バスなどの公共交通機関で駅までといった2次的な交通整備するというイメージではなく、「そこに車で来たいな」と思わせるような駅のあり方を提言しています。極端に言うと、駅全体を大駐車場にしても良いと思うくらいですが、「パーク&ライド」ができる使い勝手の良い駅として新鳥栖駅の整備を行えば、近隣の方々にも気軽にお使いいただけます。そうすれば、新幹線の停車数も自然と増えていくと思います。 ●九州バス観光拠点構想 さらに、観光バスの拠点をつくってほしいと地元に強くお願いしています。今のところ、九州でバスを利用する国内の旅客も、アジアを中心とした海外からの旅客も、博多駅を中心にバスに乗り換え、各目的地へと出かけています。そこで、新鳥栖駅周辺に観光バスの発着拠点を整備し、九州の東西南北の交差点に位置する場所からバスで各地の観光地へ行ってもらうという構想も進めています。 博多駅では筑紫口がバスプールとして使用されていますが、現在のところ手狭で、お客さまであふれかえっています。 新鳥栖駅前に観光バス専用の発着拠点を整備すれば、スムーズな旅客の誘導も可能ですし、何よりここを拠点にすれば、九州自動車道のクロスポイントである鳥栖ジャンクションを使って、湯布院でも、長崎でも、九州各地へ大変楽に行けます。博多駅からも新幹線でわずか10分という所要時間の有利さも合わせて、新鳥栖駅周辺の観光バス拠点化構想は十二分に実現可能な話です。 ●がん医療拠点構想 加えて、新鳥栖駅から徒歩2分ほどの地点に、粒子線がん治療施設の建設計画を進めています。粒子線治療は、がん病巣に狙いを絞って放射線を照射する最先端治療法です。がん病巣を狙いうちするため、がん病巣へ十分なダメージを与えながら、正常細胞へのダメージを最小限に抑えることができます。 現在、全国に6ヵ所の粒子線がん治療施設の立地は、九州全体、またの西日本の利用者の利便性を考えると、九州自動車道・長崎自動車道の結節点に近く、やがては九鹿児島ルート・西九州ルートの完成により、高速軌道の結節点ともなる新鳥栖駅周辺以外には考えられないとも言えます。 ●化ける新鳥栖駅 このように、新鳥栖駅はその位置から、機能性を自ずと求められるというところがあります。求められる機能性を受け入れ側の私たちが自覚し、確実な仕掛けを行えば、そこに通う人たちで乗降客は自然に増えてきます。新鳥栖駅は大きく「化ける」可能性をポテンシャルとして秘めた新幹線です。 ‐‐‐‐いろいろなアイデアがありますね。どうもありがとうございました。 |
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