「ローカル・マニフェストによる地方のガバナンス改革」 掲載
発行 株式会社 ぎょうせい
発行日 2004年7月25日
編著名 株式会社 UFJ総合研究所 国土・地域政策部
知事名 古川 康  選挙日 2003(平成15)年4月13日

1.ローカル・マニフェストの概要
@作成経緯
立候補を決め、選挙に向けて準備を進めていた時期に、前三重県知事の北川氏にマニフェストの作成を勧められたことがきっかけとなった。四日市大学竹下教授の論文等を参考として、何を有権者に訴えるかという旗印が明確になるというメリットは大きいと考え、取り組むことに決めた。
マニフェストは、主としてブレーンとなってくれた人物と二人で約10日間で作成した。ただし、二人だけで考えるのではなく、公務員時代の知人などさまざまな人に知恵を借りながら作成した。粗々のものを自分でつくり、それをいろいろな人にぶつけて磨いていくことが重要であると考えており、こうした過程により、さまざまな選挙民の思いが込められたマニフェストになっている。

A構成
マニフェストに掲げられた政策の方向性は以下のような構成で表現されている。
■5つの基本理念
■6つの挑戦と49の具体化
 <6つの挑戦>
1.「オープン さが」 「モノ言う さが」 を実行します。
その前提にたって
2.まずは「緊急優先課題」に取り組みます。
次に〜「夢ある さが」「癒しの さが」「学びの さが」の実現に向けて〜 挑戦します。
3.「すべての人が輝き、活躍できる県」にします。
4.「活力あふれる、パワフルな県」にします。
5.「癒しに満ちた、暮らしの先進県」をつくります。
6.「人財創出、学びの知的立県」をつくります。

B特徴
「6つの挑戦」と題された政策の方向性は、全てが並列ではなく、「1.」が全体に係る行財政運営の基本姿勢を示すもの、「2.」が雇用の問題を中心に緊急に優先して取り組む事項を示すものとなっており、その上で「3.〜6.」に分野別の取組を位置づける構成となっている。また、「6つの挑戦」の一つひとつについて、≪例えば≫として具体的な49の目標を掲げている。
なお、知事本人は、「古川やすしの約束」は個別の政策ごとの財源が明らかにできないなど、厳密にはマニフェストとはいえない部分があると考えており、そのため、資料にも「県民への政策宣言(マニフェストへの試み)」と題している。しかし、「選挙に取り組む姿勢として出来る限り公約を具体化し、かつ早くそれを実現するために取り組むという姿勢を明らかにしたい」(佐賀県議会平成15年6月定例議会における知事答弁より抜粋)との考え方からこのマニフェストを作成したという。

2.ローカル・マニフェストの影響
@計画行政との関係
マニフェストの目標達成状況は半年毎にチェックし、結果を公表することとしている。また、行政評価システムは施策や個別事業を対象とした仕組みが従来からあったが、事業を実施する各部局の自己評価のみのものだった。
マニフェストが導入されてからは、三役による評価や第三者委員会による各部評価を行う仕組みに発展させており、行政活動の評価と改善の仕組みが、マニフェストを契機に大幅に改善された。

A議会との関係
県議会議員の一部からは、厳密な意味ではマニフェストとはいえないのではないかといった疑義も出されたが、概ね好意的に受け入れられたと考えている。

B県民との協働
当選後、庁内での検討と並行して、県民との緊急対話集会等を県内7地域で行うなど、できるかぎり県民の意見に耳を傾けた。

3.その他
マニフェストに掲げられた目標に対する、関係課との調整には知事が直接参加した。一部は担当者レベルとも知事が直接調整を行った。佐賀県において、知事がこれほど頻繁に職員と直接接するというのは従来は無かったので、職員にとっては非常に新鮮であり、意識改革につながった。
また、従来は県全体の政策の方向性について検討する組織は幹部の連絡会的な組織(部長会)しかなく、しかも非公開であった。マニフェストの導入を契機にマニフェストに掲げられた目標の管理、すなわち政策の評価を行う組織として政策検討会議が設定され、すべての資料、議事録も公開されるなど、政策検討の体制や情報公開もマニフェストを契機に拡充された。
なお、一般に言われている通り、マニフェストの作成は現職に有利で、新人として立候補した知事は大変苦労した。このため、マニフェストを普及するためには、情報公開を進めることが重要な課題であると考えている。

■経歴■

昭和57年 4月 自治省財政局指導課
57年 7月 沖縄県総務部地方課
59年 4月 自治省消防庁地域防災課
61年 4月 自治省行政局振興課
平成 元年 4月 長野県企画局企画課長
2年 4月 長野県総務部地方課長 
4年 4月 自治大臣官房情報管理官付課長補佐
5年 4月 自治省税務局固定資産税課課長補佐
6年 4月 岡山県総務部財政課長
8年 8月 自治省税務局企画課課長補佐
9年 9月 自治大臣秘書官
10年 7月 自治大臣官房企画室環境対策企画官
10年11月 自治大臣官房地域振興券推進室副室長兼務
11年 4月 長崎県商工労働部長
13年 4月 長崎県総務部長
15年 1月 長崎県及び総務省を退職
15年 4月 佐賀県知事就任