冊子名:「原子力立国計画 日本の選択」
 経済産業省 資源エネルギー庁 編
 発行所:社団法人日本電気協会新聞部
 発行日:2006年11月13日
「原子力部会報告書」寄稿文
地域住民との信頼関係を築くために

原子力発電関係団体協議会会長 佐賀県知事 古川 康

 佐賀県では、平成18年3月、九州電力玄海原子力発電所3号機におけるプルサーマル計画に事前了解をしました。最終的にそう判断するまでに、たくさんのご意見やご質問をいただき、また、新たに気づいたり学んだりしたこともありました。
 部会におきましても、そういった現場の声を踏まえてご発言をさせていただきましたし、そのエッセンスは本報告書にも盛り込んでいただいています。 
 そのいくつかを実例を交えて、改めて述べさせていただきます。

(自分の言葉で、心に落ちるような説明を)
 255。これは、佐賀県が、九州電力玄海3号機におけるプルサーマル計画について、安全性は確保されると判断し発表した平成18年2月7日から4月末までの約3か月間に、メールによる「知事への提案」制度を利用して、私あてにいただいたメールの件数です。
 いただいたご質問で特に多かったのは二つです。
 一つは、「なぜ、原子力発電なのか」です。これに対しては、「原子力発電は、発電をするプロセスでCO2(二酸化炭素)をまったく出さないので地球環境にとってプラスだし、原油高に影響されない電気料金が実現できるのでくらしにとってもプラスだからです。」とお答えしています。
 もう一つは、「ほんとうに大丈夫なのか」です。最初、私たちもまったく同じ疑問を持ちました。そこで、自分たちなりに材料を集め、研究を重ねました。
その過程でいろいろなご意見を伺い、出てきた論点を整理・検討しました。そして、最終的に、安全性は確保されるという判断をし、そう判断した理由をご説明しています。
 九州電力がプルサーマルの実施を決定され、佐賀県に説明に来られたのは、平成16年4月28日でした。それから約1年9か月の間、九州電力、国、そして佐賀県がそれぞれ推進・慎重両方の立場の専門家の方々による公開討論会やシンポジウムを開催するなど、オープンな形で議論を進めてきました。もちろん、県議会でもマスコミでも何度も取り上げられました。
 しかし、その間にこの件で私あてにメールをいただくことはあまりなく、例えば平成17年は1年間でわずか15件でした。
 広報の難しさを改めて痛感させられました。専門家ではない住民の方々に、情報をたしかにお届けし、納得していただくためには、科学的な正しさはもちろんですが、それ以上に、自分の言葉で、心に落ちるような、わかりやすい説明をすることが大切なのです。

(世界の最新動向を地域にも)
 平成18年は、チェルノブイリ原発事故からちょうど20年目に当たるということもあって、事故後脱原発を決定したスウェーデンやドイツの例を挙げて、「世界は脱原発なのに」というご意見もたくさん寄せられました。
 その一方で、例えばフィンランドでは原子力発電所の新規建設に否定的だった立場を転換して、建設を開始したということはほとんど知られていません。
 原子力をめぐる世界の最新動向を一番把握しているのは、もちろん国です。
地方自治体が住民の方からご質問をいただいたときにも自信をもって正確なお答えができるよう、タイムリーに情報をご提供いただくことを期待しています。

(報道には適切な対応を)
 平成18年3月2日の朝、新聞を読んでいると、原子力発電所の検査制度について、国の定期検査を廃止し、電力会社の計画に基づく自主検査に変えるという記事が目に飛び込んできました。
 すぐに担当課に事実確認をするよう指示しましたが、その日のうちに、経済産業事務次官が記者会見で、「この報道にあるような定期検査を廃止するとか、ましてや事業者に検査を任せるといったようなことは一切考えておりません。」とはっきり否定なさいましたので、大きな混乱はなく、ほっとしました。
 このような誤った報道や極端に偏った報道があったときには、無用の混乱を招くことのないよう、迅速かつ明確な対応をすることが必要です。
 一方、行政に非がある場合や、行政としては触れてほしくない場合も、正しい報道が行われたときには率直に認めなければなりません。間違ったときには間違ったと素直に言える人の言葉をみんなは信じるのだと思います。

(むすびに)
 原子力政策を進めるには、こうしたことをひとつひとつ積み重ねていって、地域住民との信頼関係を築いていくことが何よりも大切です。
 私たち地方行政をあずかる者は、地域に住み、地域を愛する住民の方々と一緒になって、地域をもっともっとよくしていきたいと思っています。
国及び電気事業者におかれましては、どうか、地域住民のみなさまが安心して暮らすことができるよう、本報告書を画餅に帰すことなく、早急に具体的な行動に移していただきますようお願いいたします。