| 「月刊毎日フォーラム」12月号掲載 | |
| ◎知事に聞く 交付税が多いと地域の景気に鈍感になる 「暮らしやすさ」向上も大事な仕事 古川康・佐賀県知事 佐賀県の古川康知事(47)は、地方交付税交付金が県税を上回る実態について「地域の景気に鈍感になる」と交付税頼みにならざるを得ない財政構造の不健全さを指摘し、法人住民税を国に逆移譲する代わりに地方消費税を増額する独自の税源交換案を提唱する。またテレビ放送のデジタル化による県民の不便解消にも乗り出すなど「県民の暮らしやすさ」の向上に気を配っている。(聞き手 本誌・名和興一) ―中央政界は巨大与党体制になりましたが、地方自治への影響をどう受け止めていますか。 古川知事 地方自治を担う立場としては、与党が安定することはプラスと言っていいと思います。それは民主党が多数の政権となった場合でも同じです。地方に関係する法案が政局の混乱で廃案になるようなケースがなくなりますから。例えば10月の特別国会で成立した障害者自立支援法は都道府県の財政負担と事務が盛り込まれていますが、いったんは国会解散で廃案になるなど曲折がありました。 ―今年も国と地方の間で税と財源の在り方について激しい論争が交わされました。地方交付税制度の改革についてどう考えますか。 古川知事 地方交付税はギリギリの財源調整機能を残して、規模はもっと小さくするべきだと思います。佐賀県の歳入は、県税が約700億円に対し交付税はその2倍の約1400億円です。交付税は自主財源という考え方があるにしても、それが地元から生み出す税収よりも多いということで、地域の景気に鈍感になりかねない。国から金が回ってくると思うから地元の景気を分析し判断する人がいなく、すべて日銀や財務省におんぶしている状態です。 ―つまり国から地方への税源移譲が重要になるわけですね。 古川知事 今回の税源移譲のやり方は所得税から住民税に振り分けるのですが、地域間の税源格差はそれほど縮小しません。移譲の対象になっていない法人関係税の税収格差は、最低の奈良県と最高の東京都の開きは7倍もあります。これに対し消費税は沖縄県と東京都を比較しても2倍程度しかありません。現在、法人住民税と法人事業税は地方税になっていますが、地域により偏在性の高い法人住民税は国税の法人税と一緒にして国に返し、その代わりに消費税(5%)のうち1%の地方消費税率を高めるという税源の交換をしたらどうだろうかと提唱しています。地域の産業振興の意欲をそがないために法人事業税は地方税として残します。 ―ユニークで大胆な発想ですね。三位一体改革では義務教育費や生活保護の国庫負担など細かな補助金の議論が多かったようですが。 古川知事 補助金の中身の議論よりも、税目の交換の議論があってもいいのではないかと考えました。義務教育費といえば、全国知事会で話したことがあるのですが、小泉純一郎首相が好きな旧長岡藩の「米百俵」の逸話には二つの意味があると思います。一つは地方が食べるものをがまんしても教育に力を注ぐものだということ。もう一つは贈られた米は売ることで一般財源になり自由に使えることができたということです。首相は「そういう考えもあるか」とうなっていましたが。 ―国も地方も財政が厳しい状況の中で、増税の必要性をいう谷垣禎一財務相と時期尚早とする与党幹部との論争が激しくなっていますが。 古川知事 谷垣さんの主張は否定できないと思います。歳出カットはしなくてはならないが、少子高齢化社会の中で毎年増え続ける給付などに対応できるかということを、行政の責任者ははっきりいうべきです。そのための道筋をきちんと示す必要はあります。選挙の時だけ増税はしないといっていても、国民はもうだまされません。不人気覚悟で負担増を避けられないとはっきりいうべきです。 ―しかし国民は、負担増の前に行政はもっと削減すべきではないかと思っています。 古川知事 特別会計や政府系金融機関の廃止や統合はやらなくてはなりません。まずはやると決めなくては進まない。公務員改革は、国はようやく5%の純減計画を出しましたが、地方はもっと早くから取り組んでいます。佐賀県では県職員のうち圧倒的に多い教職員と警察職員は国が定数を定めているので、残り3分の1の知事部局(今年度3520人)だけでもこの10年間で8・2%削減しています。さらに10年間(04年度から)で500人(14%)純減する予定でいます。 ―県の運営者として知事の責任と期待がますます大きくなります。 古川知事 直接の自治事務ではなくても「暮らしやすさ」を高めることが重要です。テレビ放送のデジタル化の問題がありました。佐賀県は民放が1局しかなく、多くの県民が福岡県域の免許で放送している民放の漏れ波≠見ているのです。実態と放送免許の乖離があるため、デジタル化による出力調整などで佐賀県で見られなくなるようなことがないように地上デジタル放送普及対策検討会を設け関係機関に働きかけました。また県内のコンビニ、セブン|イレブンにAТM(現金自動受払機)がなく転勤者は不便に感じていましたが、会社にお願いして設置していただきました。電波や金融の分野の利益代弁者は知事しかいないのです。 【プロフィル】ふるかわ・やすし 1958年佐賀県生まれ。東京大法学部卒。82年旧自治省入省。岡山県財政課長、自治相秘書官、長崎県総務部長などを経て03年4月知事就任。 |