月刊ガバナンス 平成16年12月号掲載
マニフェストで県政改革の スピードが飛躍的に向上   ――佐賀県

佐賀県では昨春の知事選で、マニフェストを掲げた古川康氏が初当選。
当選翌月の5月にはマニフェストを具体化するため幹部職員による政策検討会議を設置、6月には工程表を明記した「重点実施項目」を決定した。今年4月には本部制の導入など 大幅な組織改正を実施、8月に重点実施項目の進捗状況と実績評価を公表した。 マニフェストの導入によって、県政改革のスピードは飛躍的に向上している。

マニフェストを掲げた古川知事の就任以来、佐賀県は県政改革のスピードが加速している。





統括本部総括政策監の金ア健太郎さん。
「時間はかかるだろうが、県庁全体の組織風土改革に取り組んでいく」と話す。






政策監グループ政策第一担当副課長の脇山行人さんは「職員の意識が変わった。守りから攻め重視の評価になっている」と話す。






政策監グループ新政策推進担当係長の久保山善生さん。「まず県民にとってどうなのかを職員は考えるようになってきた」と話す。






マニフェストは 「県民との約束」

「とにかくスピードが速くなった」  
古川知事が掲げたマニフェストの進行管理を担当する統括本部政策監グループ。担当職員は、口々に改革のスピードを語る。マニフェストの具体化をはじめ大幅な組織改正、国への積極的な提言など、この1年半の佐賀県の変貌ぶりは特筆すべきものがある。その最大の恁エ動力揩ニなっているのは古川氏が知事選で掲げたマニフェストだ。  
古川氏は昨春の知事選で、「古川やすしの約束―県民への政策宣言(マニフェストへの試み)」と題したマニフェストを公表、激戦を制して初当選を果たした。マニフェストはA4で14ページ。「県民の皆さまと私との約束」と位置づけ、「4年間での具体的な実行を前提とした政策体系」として示している。  
マニフェストは五つのビジョン、六つの挑戦と49の具体化で構成。最初に「『オープンさが』『モノ言うさが』を実行します」と全体の基本姿勢を示し、その前提に立って、A雇用問題を中心に緊急優先課題に取り組むこと、さらにBすべての人が輝き、活躍できる県C活力あふれる、パワフルな県D癒しに満ちた、暮らしの先進県E人財創出、学びの知的立県――に挑戦するとし、「例えば」として計49の具体的目標を示している。

49の具体的目標を提示  

49項目で示したのは、▽情報公開度全国ナンバーワン▽知事特別補佐(仮称)の登用▽受注実績のないベンチャー企業などへ県が受注機会を与える「トライアル発注制度」の実施▽佐賀経済特区の創設▽1万人規模の新規雇用の創出▽意欲ある市町村に県の権限を積極的に移譲する「まだら分権」の推進▽外国映画等のロケ誘致を進める「アジアのハリウッド構想」▽下水道整備率を現在の46・6%から60%まで向上▽小学校低学年に少人数学級を導入――など。  
また、既存施策の見直しや行革の推進、企業誘致による税収増などで県が公表している「県財政の中期財政収支見通し」よりもさらに4年間で100億円程度の財源を捻出し、新規施策の財源に充てることを明記している。

1か月半で 「重点実施項目」を決定  

古川氏は知事に就任した4月23日、早速、部長会議でマニフェストの具体化を各部局長に指示。5月12日にはマニフェストの具体化に向け、対応方針などを決定する「政策検討会議」を設置した。同会議のメンバーは、従来からあった部長会議(非公開)とほぼ同様の幹部職員で構成。ただし、マスコミに公開し、議事録を公開することにした(議事録は県のHPで公開、今年度からは庁内にテレビ中継)。  
幹部職員だけでなく、マニフェストの具体化について知事と担当課長、係長、担当者まで加わった「マニフェスト検討会」を開催したのも佐賀県の特徴だ。当時、企画調整課企画調整主査としてマニフェストの進行を担当した脇山行人さん(現・政策監グループ政策第一担当副課長)は「古川知事のような具体的な選挙公約は初めてだったので、職員にも多少戸惑いがあった。だが、知事と直接議論することでマニフェストは必ず実現しなければいけないという認識が職員に急速に高まっていった」と振り返る。

総合計画を「補完」  

延べ10日間にわたる「マニフェスト研究会」、知事とのメールを通じての意見交換などを経て、マニフェストの工程表である「重点実施項目」は、6月13日に開かれた第2回政策検討会議で決定された。「重点実施項目」は、マニフェストを踏まえ、03年度からの4年間に重点的・集中的に実施する項目をまとめたもの。項目ごとに担当課を明示し、その実施方針及び実施工程表で構成されている。 「重点実施項目」の作成にあたって議論になったのは2000年12月に策定された総合計画との関係だった。県ではマニフェストとの整合性をチェック。「マニフェストは、総合計画に指標自体がなかったり、計画を前倒しするものがほとんどで違和感がなかった」と脇山さん。その結果、重点実施項目は「総合計画を補完する性格を持つ」と位置づけた。  
49項目のうち、雇用問題など31項目について6月の補正予算で対応、9月までには「トライアル発注」や知事特別補佐の登用など全体の8割に当たる40項目については何らかの形で取り組みに着手するほどスピーディーだった。

本部制を導入し、 総務部機能を縮小

「企画主導の組織にしたい」という知事の意向を受け、昨秋からは県庁組織の改正を検討。「職員の意識改革が進んでから組織を改正すべき」「改正するにしても来年は小幅なものにして第2弾で行うべき」などさまざまな議論が出たが、最後は「混乱するかもしれないが、仕事のプロセス自体を変えるためにも一気に変えようとなった」と統括本部総括政策監の金健太郎さんは話す。  
県庁組織は今年4月、それまでの6部制から、統括本部、くらし環境本部、健康福祉本部、農林水産商工本部(生産振興部)、県土づくり本部(交通政策部)、経営支援本部の6本部制に大幅に改正。筆頭の総務部にあった人事課、財政課は権限の一部を各本部に移譲、人員を縮小し、名称も職員課、財務課に改められた。本部をまたがなければ、副課長以下の人員配置は各本部長の権限になり、予算についても次年度の収支見通しに基づき、各本部に包括的に配分することにした。  
古川知事は3月31日、各本部長・部長に今年度のミッションを提示。ミッションに基づいて各本部長・部長は、4月22日に開かれた第16回政策検討会議で、1年間の各本部・部の経営で実行する具体的な目標や行動を知事に約束する「実行宣言」を行った。実行宣言は年度末に実績が評価され、知事は次年度のミッションを提示→新たな実行宣言を行う予定。ミッションと目標の明確化をねらいとした本部制の導入は、マニフェスト実現の大きな後押しとなると見られる。  
県では今年8月20日、重点実施項目の実績評価(6月30日現在)を公表した。それによると49項目のうち、「目標とする成果を上げている」のは8項目、「一定の成果を上げている」が31項目、「まだ成果が上がっていない」が10項目だった。 「重点実施項目はマニフェストを具体化した県の政策だが、マニフェスト自体の評価は本来は第三者が行うもの。社会的な評価機能が今後の課題ではないか」と金アさん。そのためにも、脇山さんは「行政情報をより県民に分かりやすく伝える手法を確立していく必要がある」と話す。また、政策監グループ新政策推進担当係長の久保山善生さんは、「目標設定をより明確化していくことが今後の課題」と指摘する。

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どちらかというと地味な県だった佐賀県。マニフェストを掲げた知事の登場によって、スピード感あふれる県政に大きく変貌を遂げつつあるようだ。   
(本誌/千葉茂明)