発行日:2008年1月20日新春号(通算第46号)
発行:全国ふるさと大使連絡会議
ふるさと納税の理論構成と今後の課題   佐賀県知事 古川 康

いよいよふるさと納税が実施されることになった。私は、ふるさと納税は、単に出身地に対する思いを形にするというものだけではなく、寄付文化の醸成や寄付を通して納税地を選択することにより、個人と社会との関わりあいを再構築し、ひいては新しい公共空間の創造にも資することになるものだと思っている。

私は昨年7月、志を同じくする齋藤山形県知事、村井宮城県知事、平井鳥取県知事、飯泉徳島県知事と共同で「5県知事会」として、ふるさと納税の具体的な姿を提案した。今回の与党税制改正大綱の内容は、この案と大枠においては一致しており、その意味で評価したい。

今回与党大綱で示された「ふるさと納税」は「地方公共団体に対する寄付金税制の見直し」として位置づけられ、結果として納税地の選択が可能かどうかという理論的な議論とは別次元のものとなった。5県知事会でも、具体的に税制を仕組む場合には「寄付」の形をとらざるを得ないだろうと考えていたこともあり、今回の結果について理解はしているが、議論の余地は残ると考える。

現在の社会では居住地が複数あるというケースは多く、その意味では1月1日時点での住所地の自治体が住民税を全額賦課するとしても、1年のうちのある程度の期間生活している別の自治体があった場合に全く住民税負担がないことについては課題がある。この場合、一定額を一定期間居住している自治体に住民税を納税し、その分、他の自治体に納税する額が減少するということはありうるかもしれない。

ただ、これは当該年度のことであって「過去に居住の事実がある」自治体に対して現在の住民税を税額控除する理論的支柱を立てるのは、生涯を通じた長い時間軸における受益と負担との関係を踏まえる点から議論もされているが、なかなか難しい。とすれば、ゆかりのある自治体に寄付を行い、その自治体は租税収入があったのと同じような効果があると考え、全国どの地方公共団体も寄付を受けうる立場に立つということを念頭に置いて、「互助」の精神で税額を控除する、ということは考えうるのではないか。

税額控除には外国税額控除をはじめいくつかの制度があるが、国税には「e-Tax」を使って納税すれば5000 円税額控除するという電子証明書等特別控除まである。ふるさと納税が税額控除されることになっても他の税額控除とバランスを欠くとは思えない。なお、住民税だけの世界で考えると、寄付の形態をとらず納税地を直接選択することには税理論上いくつかの制約があるが、所得税を含めるとまた異なる考え方をとることも出来るだろう。国税、地方税の担税力を持つに至った現在の自分を育んでくれたふるさとへの恩返しとして所得税の一部をふるさとに振り向けることも考えられないか。5県知事会の提案はそういった観点によるものであった。

最後に、今回の税制改正大綱においては、「民間が担う公益活動の推進」という項目が設けられ、公益法人制度改革への税制上の対応が決定されたが、ふるさと納税と合わせたとき、平成20 年度という年は個人と社会のありようについて税制上の本格的な議論がスタートした年と位置づけられるのではないかと考えている。