| ふるさと財団情報誌「FURUSATO Vitalization」平成16年6月号巻頭言 | |
| 「佐賀県いかがでしょう」 佐賀県知事 古川 康 | |
「正庁」という言葉がある。調べた限りで正庁のある都道府県庁は47のうち15府県だった。特に戦前作られたような古い県庁には必ずあるスペースで、ここで県庁としてのさまざまな儀式を行うことになっている。 正庁はもともとは「正廳」と書いた。県庁の「庁」の字自体がかつては「廳」で、住民の意見や訴えを聴く建物が県庁であったということだと思うのだが、今はこの「庁」の字が略字になってしまった。聴くことの重みが薄れてしまっているのかもしれない。 その正庁で4月20日、調印式が行われた。豊田合成株式会社というトヨタ系の会社が佐賀県武雄市に進出することになったという企業立地の調印式だった。 最近、信号の色が少しずつ変わっているのをお気づきだろうか。今まで電球式の信号だったものが次々にLED式に取り替えられている。LED式の信号は西日が差すときでもきちんと色を見分けることができるし、また7〜8年に1度くらいにしか球を取り替えなくていいということで、これまでは年に一度取り替えなくてはいけなかったことを考えれば、大変に維持管理費が安くすむというものだ。 このLEDは今は携帯電話のバックライトに主に使われているが、これからパソコンのディスプレイや、ゆくゆくは蛍光灯に変わって電灯に使うことなど、幅広い用途が期待されているもので、佐賀県としてもこの工場の進出を他の県と競いつつ誘致運動を展開していた。 その調印式において、豊田合成株式会社の松浦剛社長は、佐賀県に決めた理由として、地震がないこと、水が豊富にあること、国際空港が近いこととし、そして最後に、佐賀県人の人柄をあげられた。 最後の一言が僕には、とても嬉しかった。というのは県民性を表すようなある出来事があったからだ。 豊田合成はその関連会社である豊田合成九州が既に佐賀県武雄市に進出している。その豊田合成九州の武雄工場はもちろん自動車関係の部品を作っているところだが、景気回復ということもあって、忙しい日々が続いている。 今年の冬は雪が多く、佐賀でも大雪が降った。天気のことだけに翌日がどうなるのかわからない状態だった。雪が降り続くと、道路が使えなくなることもさることながら従業員が雪のために集まれず、操業ができなくなることを心配されていた。 ところが、その気持ちはマネージャだけもっていたのではなかった。翌日の出勤に不安を感じた従業員が30人も自発的に会社の休憩室に泊まりこんでくれ、製造ラインをとめずにすんだのだった。しかもそれは正社員だけではなく、パート従業員も中には含まれていた。 この会社の業務改善の精神が浸透していることもさることながら、この話は、佐賀県民の勤勉さ、まじめさ、責任感の強さを何より雄弁に物語っていると思う。 まじめにやるとか、きちんとやるというのは今ではあまり流行らない徳目なのかもしれない。しかしながら、それをきちんと持っているということはいつの時代も評価されるものとなるのではないだろうか。 佐賀県では、企業誘致が決定したあと、その企業の希望があれば、そのときの担当職員がそのあとどこの部署に異動しようとも県職員である間はその企業の担当を続けるという誘致企業永続支援員(パーマネントスタッフ)制度を導入した。この豊田合成様にもその制度を活用していただき、それまでこの企業の誘致を担当していた職員が引き続き担当することとなった。 これもまた「人」が評価されたと思いたい。 残念ながら「正庁」を企業立地の調印のために使う次の予定はまだ入っていないようだ。 このコラムをお読みの社長様、佐賀県はいかがでしょうか。 |