| 2003年8月29日(金曜日)日本経済新聞掲載 | ||||||||||||||||||||||
電子政府政略会議 市民参加で"新たな民主主義" パネル討論 eガバメントからeガバナンスへ 〜 電子政府・自治体のゆくえ |
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パネリスト
今回のテーマ「e-ガバメントからe-ガバナンスへ」は、住民一人ひとりが行政に参画し自らが政府を作っていこう、そしてそのプロセスを「e」、つまり電子化していこうという意味を込めたものだ。 電子政府・電子自治体は政治の現場にどんな変化をもたらすか、また「e」ガバナンスの可能性をどう見るか。 |
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北川 情報技術(IT)の利用で政治、民主主義のあり方が着実に変わりつつある。これまではお任せ民主主義で、すべてが行政に丸投げ。行政に要求することが民主主義と錯覚してきたきらいがあった。 そこで私は三重県知事在職中に県政の基本的な理念として「生活者起点」を掲げた。 政治に積極的にかかわる市民が育ち、県政の担い手になってもらいたいという思いからだ。 その一環として、ITを利用して県民が議論する電子会議室「三重県民e-デモクラシー」も立ち上げた。 ITは市民が行政の積極的な担い手として育っていくための不可欠のツールであり、この試みはお任せ民主主義に風穴を開けた。電子政府・電子自治体が今後、民主主義社会をいかに発展させていくかに大いに注目している。 また、民主主義のさらなる発展のために、できるだけ多くの人にマニフェスト(政権公約)を書いてもらうことを提案したい。首長や政党、党首だけでなく、市民の一人ひとりがマニフェストを作る。それを政党に突きつけ、本当にやる気のある政党に政権を委ねるべく運動を起こしてもらたい。こうした動きが起これば縦割り社会ゆえの閉そく感を打ち破り、21世紀の文化、民主主義、あるいは経済においても新たな一歩を踏み出していけると確信している。 |
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清原 電子政府・電子自治体により、自治体は競争力を高めることができる。ただ、自治体は何のための競争力なのかを見失ってはいけない。現在における自治体の目標の一つは住民自治の充実であり、自治の主人公たる市民にその場を保障することは重要な仕事の一つである。 この点、ITには共同の場を提供し、その実効性を上げるという特徴がある。インターネットは普及率が増すにつれ、そのメディア特性である対等性を発揮し、誰もが参加できるさまざまな機会を提供してきた。 しかし残念ながらまだ参加できない層が存在するのも事実。 自治体はデジタルデバイド(情報格差)の克服に努めつつ、BPR(業務改革)を通して電子化すべき仕事、電子化すべきでない仕事を慎重に見極めていくことが必要だ。 ただ、ITを過信してはいけない。大切なのはリアルなコミュニティーで、それがあるからこそバーチャルなITによるコミュニティーが生きてくる。今、三鷹市では「産学民公」が一丸となってITを活用した先進的なまちづくりを目指す「あすのまち・三鷹」プロジェクトに取り組んでいるが、あくまでも「市民満足度の向上」が目的だ。 e-ガバナンスではやはり、人間が本来的な生き方を実現できる社会を目指すことにこそ主眼を置くべきだろう。 |
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古川 ほかの自治体もそうかもしれないが、佐賀県庁の現状を見てみると、職員の情報リテラシーの向上がまず必要である。 例えば、現時点では電子メールが届いてから三日経過しても、職員の一割は開いていないというような状況である。 また、電子県庁という流れにおいても、単にいまやっている仕事を電子化するだけでBPRにはほとんど手がつけられていない点が問題だ。たしかにウェブや電子メールを活用することで効率的に情報収集できるようになった半面、私自身そうだが、いまでは大量の情報の処理に苦慮する羽目に陥ってしまっている。 情報をいかにしゅん別するか、ここでもやはりBPR的な作業が必要であり、そこにこそ電子自治体の意味がある。 この点とも関連するが、私は今年4月の初登庁の際に職員に対して「授業参観に行こう。地域活動に参加しよう。非営利組織(NPO)に入ろう。」と呼びかけた。 職員一人ひとりに一県民としてあえて外から県政を見直してもらおうという狙いだ。 距離を置くことで以前には見えなかったものが見えるようになり、これが結局BPRにつながり、ひいては「生活者起点」の行政サービスにも発展していくことを期待している。 |
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ビンダー 電子化は政府や自治体にとり、大きな潜在的なチャンスであることをまずは強調したい。ITを活用することで、行政サービスに透明性、効率、市民参加の機会、そしてイノベーションを付加することができるだけでなく、民主主義の発展を促すという一面も期待できる。しかし、その一方で、民主主義、特に議会制民主主義を脅威にさらしている側面もある。 英国では近年、携帯電話やインターネットを使ったリアルタイムの世論調査が盛んだが、これはある意味において政治家の中抜きを招く。つまり政府が議員を介さず市民と直接対話することになり、議会制民主主義を形骸化する。さらに心配なのは、いわゆる「思想の自由市場」を経ずに世論が形成される危険性が高まることだ。 インターネットの普及により若者と中高齢者との間でコミュニケーション方法のジェネレーションギャップが起きつつある点も見逃せない。若者は新聞を読まず、ウェブサイトを見て情報を得ているが、政治家の多くは新聞を読んだり、テレビを見たり、あるいは記者と話すことで情報を得ている。政治家はこの溝を埋めるべく選挙民と電子メールをやり取りしたり、ウェブサイトを立ち上げて情報を発信するなど新しいコミュニケーション方法を学ぶ必要がある。 |
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電子政府・電子自治体を進める上でやはり国と自治体の関係についてもう少し議論を深める必要がありそうだ。 いま三位一体の改革が叫ばれているが、ITを活用することで地方分権、行政のスリム化が加速し、さらにeデモクラシーやeガバナンスといった新たな民主主義が胎動していくことを期待したい。 本日はどうもありがとうございました。 |
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