古川 康の自治省時代から知事になる前までの執筆をご紹介します。
「地域文化」 Vol.27  1992年7月  村山 建大(古川 康のペンネーム)
「本」との話

 本がどうも最近あぶない。
 そもそも本屋が減ってきている。全国に本屋はだいたい28,000店くらい(長野県には約400)あるのだが、このうち90%以上はいわゆるフツーの本屋さんで、従業員一人か二人の零細企業である。しかも無休の本屋さんの割合37.8%、12時間以上営業しているところが63.7%あり、結果として赤字の店の割合は28.3%(日販『書店経営指標』等)。
この規模の他の業種と同じく、ここでも後継者難。数は減る一方である。

 本が売れなくなってきているということもある。たとえば、文芸書の場合、いま、三万部を超える本を出せるのは、村上春樹とか司馬遼太郎などを除けばないといってよく、普通で九千、八千くらい。となれば、三万近くある全国の書店すべての店頭に並ぶのはそもそも無理だということになる。
「新聞の書評に載った本ぐらい、ちゃんと店頭に並べておいて欲しい」と思うのはもっともだが、実は、そのことは、フツーの本屋さんにとっては至難の技なのである。
欲しい本は注文するしかないが、これだと二週間くらいかかってしまう。このスピードは、東京オリンピックのころから変わっていない。二週間も待っていられない人はどうするか。

1.八重洲ブックセンターに行く。
このパターン、実に多い。あそこに行くために出張してるような人もいる。私は一度だけだが、あそこで割引をしてもらったことがある。晶文社の本と農文協の本を「既刊本なんですが、在庫確認お願いします」と電話でお願いしたところ、在庫のあることを調べてくれたうえで店員が「業者の方ですか」と私に尋ねたのだ。
これは何事かと思い、つい「はい、そうです」と当時住んでいた小金井市の本屋の名前を挙げておいて、本を受け取りに行ったら、何と、本が割引になっているではないか。
八重洲ブックセンターは、業者利用も多く客注の本を新幹線で買いに来る本屋もあるらしく、それで割引をしていたらしい。
これは明らかに詐欺罪を構成するため、オススメはできないし、いまも八重洲ブックセンターが割引をやっているかどうかわからないが、好奇心があり、かつ、いまの自分の社会的ステイタスに未練のない方は一度どうだろうか。(繰り返すがススメているわけではない)。
値引きのことをいえば、本は再販商品であるが、生協のようなところは別なので、県内でも大学構内にある本屋は割引になっている。
厳密に言うと組合員以外の利用はダメだが、胸を張っていくと向こうも「ああ、この方は教授サマに違いない」とマケてくれる。

2.宅配便を利用する。
あちこちの書店がやっている。三省堂BOOK急便なら送料は、15,000円未満は何冊でも500円、それ以上は無料である。クロネコヤマトのブックサービスの場合は本代にかかわらず送料は一回300円。これに対抗したシロネコヤエスの配本便(ホントにこういう名前なのだ)は、送料は本によって違うが、15,000円以上は無料。
ただ、こうした配本便は、都内在住の人がまとめ買いをする場合に使う割合がかなり高いとのことである。

 とまあ、方法はいくつかあるが、このままでは、地域から本屋がなくなってしまう。
最近、ロードサイドに「本」と大きな看板を出している店があるが、あの手の店は「ビデオ、CDだけでなく本もあるよ」的店が多く、本といっても雑誌とコミックが中心である。
 
 最近、大分県耶馬溪町で町営の書店がオープンしたのは、そういう危機感を反映したものだろう。そして、香川県高松市には「宮脇カルチャースペース」という本の展示場があり、八重洲ブックセンターの二倍はある床面積に三十三万冊の本が並んでいる。ただし、ここでは本は売らず、希望する本はカウンターに持っていって受け取りを希望する本屋を指定し、その本屋で受け取ることになっている。小売をしないから、大店法にひっかからない。宮脇書店自体が取次の機能を持っていたからこそできることではあるが、各県に一つぐらい、こういうのがあっていいではないかとも思うのだが、いかがであろうか。
ちなみに霞ヶ関某官庁ではコテンパンでありました。