「佐賀経済同友」2005.5 
No.589 発行所:佐賀経済同友会
発行日:平成17年5月1日
総会特別講演  平成17年度の県政について  

佐賀県知事 古川康
はじめての大地震

福岡県西方沖地震は、みやき町で震度6弱を観測しました。県内の被害総額は2億円を超え、会員の方々の中にも、様々な意味で被害に遭われた方々がおられると思います。その方々に対しましては、心からお見舞いを申し上げます。
県庁では、10時53分の発災と同時に、自動的に災害対策本部が設置されました。私が県外での予定を取りやめ、県庁に着いた時には既に800人ぐらいの職員が登庁していました。
 災害発生時には、通信手段のようなツールや、ルールも必要ですが、それ以上に必要なのはマインドだと思いました。「何かあったら県庁に行こう」という心を持ってもらっている限りは、組織としては健全なのではないかと思います。
 11時半過ぎには、県のホームページで情報提供を始め、3時半からの第2回の災害対策本部会議は、ネットでライブ中継をしました。
 ニュースで流れるのは福岡の様子ばかりで、佐賀はどうなっているのかと心配された方たちが、「ホームページを見て安心しました」とか、ほぼリアルタイムで情報提供していましたので、「こんなふうにしてくれれば安心ですね」といったお礼や感謝のメールを随分いただきました。
 それから、その日の対策を終えて夕方家に帰ると、近所のおばさんから、消防団に入っておられるご主人が地震が起きてすぐに見回りに出かけられたというお話をうかがいました。町内のひとり暮らしの高齢者のところに、「火を消しておるね」、「体は動くね」などと声をかけながらずっと見回っておられたというのです。だれかに言われたからではなく「自分は消防団にいるから」と、とっさの判断で動かれたのは、「ご近所の底力」というか、地域の持っている力の現れだと思い、とてもうれしくなりました。

佐賀県産のおいしいお酒を認定

最近の話題として、100%佐賀県産の原料でつくられた日本酒と焼酎で、おいしいものを、このたび、「佐賀県原産地呼称管理委員会」で認定していただきました。
一時期、淡麗でさらりとした感じのお酒に人気があったのですが、最近はコクのある佐賀県のお酒に非常に関心が高まっています。
 これを販売する際、メーカーが「100%佐賀県産の米麦です」と宣伝するより、第三者がきちんと審査をして認定した方が、売る方も売りやすいし、ブランド力も向上するという、長野県の酒類卸メーカーの社長さんの呼びかけに応じてやってみたもので、非常に反応がありました。
日本酒35点、本格焼酎3点が選ばれ、統一マークの入ったラベルが貼られて、4月26日に一斉に店頭に並ぶことになっています。ぜひ、注目していただきたいと思います。

各本部が工夫して編成した当初予算 

平成17年度当初予算は、各本部にかなり権限を委ねて編成したことが特徴です。
今までは、一度ついた予算は一円も残さずに使い切ろうとしていましたが、去年から使い残しの半分は翌年の予算で使えることにしましたので、随分使い残しが出できました。
また、職員を1人減らしたら800万円予算要求できるというしくみも作りました。これまでは、予算と人事を財政課と人事課で分担していたため、仕事をアウトソーシングしようとすると、委託料の分だけ予算がふえることに目が向き、節約できる人件費とはリンクしていませんでした。しかし今は、各本部で人員と予算をマネジメントしており、そういうことが可能になりました。
 それから、どうしても足りない場合は翌年度から借りたり、来年もっと予算が必要になるのなら、その分を留保しておく制度も認めました。
 各本部とも15%ぐらいの予算縮減をかけられていますので、そういったことでいろいろ工夫をしながら、予算編成をやってもらいました。
 今回の予算規模は4,270億円となり、ピークだった平成12年度から667億円減少しています。昭和の時代の額に戻りました。人件費は昭和の時代から2割減ぐらいになり、その分、福祉と教育が伸びています。当たり前だと思います。

○職員の自主削減


重点実施項目の着実な推進

平成17年度当初予算のポイントとして、まず、選挙のときにマニフェストで県民の皆様にお約束したことは、今、重点実施項目として、県政の約束になっています。これは、私が4年間県政を預からせていただく根拠となるものですので、何とかがんばって、進めていきたいと思っています。
その中で、「知の拠点づくり」については、鳥栖に福岡の私立大学の薬学部をという話や、県北部地域に県立大学をという動き、あるいは県立窯業大学校を、大学校から大学にという話もありますし、佐賀に工業高等専門学校をという話もあります。話はさまざまあるのですが、これを具体化していきたいと思っています。
また、「佐賀県企業立地促進特区」については、最近、誘致した企業にいろいろとお金を出すのが流行っているのですが、我々はそうではなく、むしろ税金を何とか工夫できないかということで、市町村と一緒に特区をつくって、新しい事業所の事業税を5年間免除、次の5年間は半減ということを考えています。

県政の直面する課題への戦略的な対応

2番目のポイントは、県政の直面する課題への戦略的な対応です。

◆経済活性化と雇用創出
シンクロトロン光研究センターを半導体関係の研究の拠点にしようと思っています。国の研究施設はたくさんありますが、企業にお使いいただく拠点としてイメージしたものは、おそらく全国で初めてですから、とにかく使い勝手のよさを売り物にしたいと思っています。
また、佐賀県には今、大規模企業や、重点的に誘致をしたい企業に対して、立地環境を備えた受け皿がありません。実は先日、富士フィルムさんの新しい液晶関係の拠点工場を佐賀県に誘致できないかという話があり、適地がないか調査をしたのですが、広い土地と水の両方を確保できるところはありませんでした。
 「今さら工業団地か」と言われるかもしれませんが、これから新しい企業を迎え入れるときに必要な受け皿が必要ないのかどうか、検討していきたいと考えています。

◆福祉・医療・安全など生活環境の向上
小児救急医療の充実については、もともと小児科医が足りません。小児専門医に見てほしいという希望を実現するため、子供の救急医療を診るセンターがない医療圏に新しいセンターをつくります。そして、どこに住んでいても24時間小児専門医が対応できることを目指しています。
歩行者安全照明灯については、県が実施した県民満足度調査で、これから整備をしてほしい社会資本で一番多かったのは、防犯灯でした。防犯灯は、だいたい市町村や自治会が対応していますが、その地域を明るくする必要があるのかどうか議論していただき、例えば各家庭で玄関灯をつける一戸一灯運動や、自治会で設置する生活防犯灯など、自分たちでできることは自分たちでやるという計画が練られているものについては、県からも補助しようと考えています。

◆佐賀ブランドの構築
「22世紀に残す佐賀県遺産」という事を、現在、一生懸命やろうとしています。これは、地域に残っている文化的価値のある建物などを、22世紀に向けて残していこうという事業です。単に残すだけでは建物は傷んでしまう一方ですので、住民の方々に利活用していただくという前提で、県も市町村も一緒になって、手だてを講じていきたいと思います。
また、2007年に団塊の世代が大量退職を迎え、アクティブなシニアが旅行市場に参入してくることを期待しまして、「ファミリーツーリズムTM」を提唱しています。「ファミリーツーリズムTM」という名前は現在、商標登録を出願しており、とてもいい名前だと思いますので、これから民間の人を中途採用し、一緒になってファミリーツーリズムTMの適地としての佐賀県を売り出していきたいと思います。

◆環境先進県づくり
まず、有明海の再生に向けた「有明海再生機構」の支援や、小さいころから環境教育をしていこうという「環境はじめの一歩事業」を行います。 また、これからは水素社会になりますので、水素エナジーの研究や懇談会、プロジェクトの予測調査などを行い、将来対応できるような芽を育てていきたいと思っています。将来的には、ファインセラミックス関係の企業が燃料電池の根幹部分をつくり、燃料電池をつくる企業を誘致し、そこから九州の自動車メーカーに供給するというような姿を目指していきたいと思っています。

◆人づくり
少人数学級を選択制で導入することになり、まず小学校1・2年生で、少人数学級かチームティーチングのどちらかを導入し、効果のほどを見たいと思っています。
あわせて中学1年生についても、この大事な時期に英語、数学でつまずかないように、これも少人数授業ができるよう非常勤講師を配置することにしました。
それから、最近、発達障害とか自閉症の子供たちが随分ふえています。そこで、福祉の分野でも行っていますが、まずは早期発見に取り組むことにしました。
また、学校に巡回相談員や専門のチームを派遣して、具体的にどういうケアをしていったらいいのか判断を求めるというようなことをやっていこうと思っています。


○佐賀県「ファミリーツーリズムTM」推進事業

県民へのサービスを向上

3番目のポイントは、県民サービスの向上です。
まず、九州陶磁文化館や名護屋城博物館、宇宙科学館の開館時間を延長しました。また、少年自然の家も、佐賀城本丸歴史館と同じように正月に開けることにしました。
それから、最近、消費生活センターや女性センター、婦人相談所での相談件数がふえています。
 対応が非常に充実していまして、DV関係では、福岡県から相談に来られるケースもふえています。喜んでいただいているのはありがたいのですが、サービスの提供は税金で行われており、あまり充実しすぎると増税の必要が生じる可能性もあり、大変難しいなと感じています。
しかし、福祉等の相談窓口の充実は大変良いことだと思いますので、今後も続けていきたいと思っています。

予算編成を終えて

今回の予算は、経常経費15%減という非常に厳しい削減率ですが、これをあと3年続けることにしています。
我々本体も身を削っていかないといけませんが、相当大変なことになるだろうと思っています。一旦膨らんでしまったサービス水準を戻す努力を国と一緒にやりながら、伸ばしていかなければならないことは伸ばしていきます。
大きな流れとしては、一つは小さな政府にしなければいけないということ、もう一つは補助金や交付税に頼らなくても済むよう、税収を増やしていく努力だと思います。
佐賀県は人口が減っていますが、人口が減ると、消費も減り、消費活動の指標に基づいて配分される地方消費税の額も減ることになります。私が 「ローカル発注」と言っているのも、県内での消費行動が活発化しないと税収が増えないからです。特に平成18年は、次の5年間の地方消費税の配分の根拠となる商業統計の調査年になっており、平成19年は全く物を買わなくても、平成18年で2年分ぐらい物を買うぐらいの気持ちで、県内の消費活動を活発化したいと思っています。豊かな海づくり大会を平成18年に開催するのもその意図ですし、平成19年のインターハイも、18年度中に買えるものは買っておいて、税収に反映されるようにすべきではないかという議論をしています。
職員の数を減らすため、アウトソーシングの研究もしています。また、公用車の運転業務を外部に委託し、運転技術員だった人にはこれから行政の分野で仕事をしてもらうようにしました。
知事車も、委託を受けた企業の方が運転しています。これまでは「知事だけは特別」だったかもしれませんが、トップが率先垂範しないと、職員がついてこない時代だと思います。
このように、いろんな新しい取り組みをしており、これからもさまざまな意味でお世話になると思いますが、どうかよろしくお願い申し上げます。

(第50回佐賀経済同友会総会講演要旨・文責在記者)